シンプルシステム株式会社

DEVELOPMENT JOURNAL

完成品ではなく、
作っている途中を書いている。

中小企業診断士でありながら、自分でコードを書いています。診断・経営ゲーム・予約・認証―― 実際に動くシステムを、ひとりで作り続けている。その設計の判断、つまずき、直し方を、起きた順にそのまま記録したものです。きれいな成功談ではありません。

背表紙はシリーズ名、数字は記事数です。押すと、そのシリーズまで移動します。

253記事これまでに書いた開発記録
30シリーズ作ったものの数
58巻シリーズを区切った単位

SERIES 01

DX経営ゲーム制作記 — 全 49 記事

Vol.2 ゲームエンジン設計
  1. 06市場シェアを「二乗」で配分するようになった経緯

    最初は線形だった。「競争スコアが2倍の企業は、シェアも2倍取れる」——これが最初のシェア配分ロジックだ。しかし、あるテストプレイで問題が発覚した。

  2. 07DX変革ボーナス×3.0はなぜ3.0なのか

    数字には根拠が必要だ。DX変革に成功した企業の競争スコアが3倍になる——この3.0という数字は、1.5から始まり、2.0を試し、2.5を経て、3.0に落ち着いた。

  3. 089ステップのターン計算エンジンを設計した話

    ターンを進めるたびに何が起きるか。これを「処理の順番」として定義することが、ゲームエンジン設計の核心だ。順番が違えば、計算結果が変わる。最終的に9つのステップに整理した。

  4. 09イベントシステムはこうして生まれた

    経営には「予期しない出来事」がある。好景気が来ることもあれば、原材料が高騰することもある。ゲームにこの「不確実性」を組み込むために、イベントシステムを設計した。

  5. 10140ゲームのシミュレーションでバランスを調整した

    「このゲーム、DXに全振りすれば必ず勝てますよね」——テストプレイ後、参加者の一人にそう言われた。研修として失敗だ。ゲームの「最適解」が一つに収束してしまえば、多様な判断の面白さがなくなる。

Vol.4 本番運用とトラブル
  1. 1635項目全PASSの自動テストをAIと作った

    本番環境を更新するたびに、ある不安がある。「前の機能が壊れていないか」——機能を追加するとき、既存の動作に影響を与えることがある。直したつもりが別の場所を壊すことがある。これを手動で全部確認していたら、更新するたびに何時間もかかる。自動テス

  2. 17ステージングと本番の同一性をどう管理するか

    「ステージングで動いたのに、本番で動かない」——これはシステム開発者が最も嫌いな状況の一つだ。この問題を防ぐために、ステージング環境と本番環境の「同一性管理」を徹底している。

  3. 18GitHub Actionsで死活監視を5分で作った

    夜中にサーバーが落ちていたとしても、誰も気づかない。研修の日の朝に「繋がらない」と連絡が来てから初めて知る——これが最悪のシナリオだ。

  4. 19緊急融資ボタンが研修を救った話

    管理者画面に「緊急融資」ボタンがある。破産した会社に対して、政府救済として融資を実行する機能だ。破産しても研修が続けられる——これがこのボタンの存在理由だ。

  5. 20AIが研修の「先生」になった瞬間

    ゲームの途中で、参加者が立ち止まることがある。「DX投資をいくら入れればいいのか、全然わからない」。ファシリテーターが1対1でアドバイスする時間は限られている。「AIを参加者の相談相手にしよう」と思った。

Vol.5 機能拡張と展望
  1. 21チーム編を1週間で追加できた理由

    個人編が完成した後、「チーム編を作りたい」という要望が出た。複数人がチームとして1社を経営する——CEO・CFO・COO・CDO・CMOそれぞれが役割を持ち、提案し、議論し、最終的にCEOが決定する。要件を聞いたとき、正直「これは時間がかか

  2. 22ドキュメントをAIと修正した話

    システムの変更は速い。ドキュメントの更新は遅い。これは多くのシステム開発プロジェクトで起きる問題だ。コードが変わっても、マニュアルや仕様書が追いつかない。DX経営ゲームも例外ではなかった。

  3. 23モニター体験会を設計した話

    システムが完成しても、売れなければ意味がない。最初の課題は「実績がないこと」だ。実績を作るために、無料のモニター体験会を企画した。

  4. 24DX経営ゲームで参加者は何が変わるか

    研修の価値を測るのは難しい。「楽しかった」「勉強になった」というアンケート回答は取れる。しかし「研修を受けた後、実際に何が変わったか」は、数ヶ月後にしか見えない。それでも、体験中の参加者の反応から、いくつかのことは言える。

  5. 25次はAI経営シミュレーションを作る

    このシリーズを書き終えて、DX経営ゲームの制作記を25本振り返った。設計の判断、失敗と修正、AIとの対話、本番障害、テスト自動化——全てのプロセスを記録した。最後に、次に作るものの話をしたい。

Vol.57 作り直しと、本番の記録
  1. 01二つに分かれた仕組みを、一つに戻す——十八日で本番を上書きする

    検証役に立てた別のAIに、要件の文書と実物を突き合わせてもらった。返ってきた判定は受入不可だった。理由を読んで、私はしばらく画面を見たまま動けなかった。指摘は不具合の話ではない。作りそのもの…

  2. 02AIを、称号ではなく経営資源にする——増幅する側に置く

    最初に書いた案を、私は全部捨てた。AIを使いこなした企業に称号を与える案。毎ターンAIの活用度を判定して有利不利を出す案。どれも会議では受けがよかったのに、実装しようとすると必ず同じ壁に当た…

  3. 03賭けではなく、挑戦と呼ぶ——変革の見返りを作り直す

    自分で作ったゲームを、自分で一人で通しで遊んでみた。何度か回して気づいたことがある。変革にはまったく手を出さず、効率化だけを積んだ企業が勝ってしまう。しかも、そこそこ勝つのではなく、圧勝する…

  4. 04試験が通ることは、終わったことではない——十一回の差し戻し

    七十六本の自動試験が全部通っていた。私はその数字を添えて、実装が完了したと報告した。検証役に立てた別のAIが同じ試験を独立に走らせ、同じく七十六本の合格を確認した。それでも判定は差し戻しだっ…

  5. 05当日、終了ボタンは無かった——四十社六班の本番

    開催当日の朝八時。参加は四十社、六つの班に分ける。開始は夕方六時半。前夜までの総点検で、進行が止まる級の不具合は零件だった。私は肩の力を抜きかけていた。

SERIES 02

1cto.jp制作記 — 全 13 記事

SERIES 03

junka制作記 — 全 8 記事

SERIES 04

toi-toi-toi制作記 — 全 28 記事

SERIES 05

AiReview制作記 — 全 4 記事

SERIES 06

AIFlex制作記 — 全 3 記事

SERIES 07

Fuhne制作記 — 全 6 記事

SERIES 08

jiji制作記 — 全 6 記事

SERIES 09

TRYWORKS制作記 — 全 4 記事

SERIES 10

AiInterview制作記 — 全 6 記事

SERIES 11

simpleRec制作記 — 全 3 記事

SERIES 12

masakiyumi制作記 — 全 5 記事

SERIES 13

AI_DX制作記 — 全 35 記事

Vol.43 AI_DX制作記 Vol.7 集客の作り直し
  1. 01広告を出して、分かったこと——買う人は、検索していなかった

    旗艦シリーズを一区切りにしたあと、私は電卓ではなく、広告の管理画面を見つめていた。表示回数は、九百ほど。クリックは、三十数回。そして、申し込みは、ゼロだった。

  2. 02同じ悩みを、違う入口から売る会社——痛みで入り、答えを後から出す

    広告を止めたあと、私は自分と同じ領域の会社の広告を、片っ端から開いていった。相手がどう売っているのかを、見ておきたかった。その中に、手が止まる一枚があった。

  3. 03「AI内製」を、主役から降ろした——入口の言葉と、検索の言葉は違う

    私の診断の入口には、ずっと「AI内製」という言葉が、いちばん大きく置いてあった。自社の仕組みを、外注しきりにせず、AIを使って自分たちで作り直す。事業の核を、そのまま見出しにしていた。それを、外すことにした。

  4. 04「あの人が辞めたら、誰も分からない」——痛みを、一つに定める

    支援機関の相談の場で、私は何度も、同じ言葉を聞いてきた。業種が違っても、規模が違っても、経営者の口から出てくるのは、だいたい同じだった。「あの人が辞めたら、あの仕事は、もう誰も分からない」。

  5. 05需要を、感覚でなく数字で確かめた——市場を、公的データで検証する

    一度、広告で手ひどく外した。だから今度は、「これはいい痛みだ」と思い込む前に、公的な数字を、机の上に並べてみた。感覚のいい話ほど、数字で裏を取る。その順番を、守ることにした。

SERIES 14

帳票AI読取制作記 — 全 7 記事

Vol.35 帳票AI読取制作記 Vol.1
  1. 01FAX注文書4社4フォーマット——AI読取で手作業転記をなくす

    4社の取引先から、それぞれまったく違う書式で。月間カレンダー形式、着日指定のグリッド形式、店舗別混在形式、丸印で数量を示す形式。担当者は4種類の帳票を読み解いて、1行ずつ手でシステムに入力する。

  2. 02FastAPI + PostgreSQLで読取結果を管理する設計

    FAX1枚が「注文書」であり、その中に複数の「明細行」がある。

  3. 03Claude Visionで帳票を読む——4種の帳票と精度の違い

    4社の本物の帳票をClaude Vision(claude-opus-4-8)に読み取らせて、結果を確認した。「精度は帳票によって大きく違う」という予想は当たっていた。どの帳票が得意で、どこで失敗するか。実験の記録を残す。

  4. 04確認画面のUX設計——信頼度・要確認フィルタ・一括OK

    「正しく読めているか見る」作業と「間違いを直す」作業だ。この2つは性格が違う。前者は速くできる。目でざっと追って「OK」を押せばいい。後者は集中が必要だ。元の帳票画像を見て、数値を確認して、修正する。

  5. 05複数画像対応——サムネイルストリップとモーダルナビ

    1枚目にカレンダー表、2枚目に備考、3枚目に追記。こういう帳票を「まとめて1つの注文として処理したい」という要件は当然だ。1枚ずつ別の注文として登録して後からまとめる、という操作は担当者には頼めない。

SERIES 15

現場の実装ノート — 全 10 記事

Vol.44 現場の実装ノート Vol.2 見えないところの、ほころび
  1. 01「4」は、数字じゃなかった——全角のまま、計算に混ざっていた

    四百件の出荷データを、一括で別の形式に変換する。そういう処理を動かした朝だった。件数も多いし、手作業では追いつかない。だから自動でやる。動かして、出てきたファイルを開いて、血の気が引いた。

  2. 02住所は知っているのに、都道府県だけ空欄だった——足りない一項目を、自分で補う

    出荷伝票を自動で作る処理を組んでいた。注文のデータから、宛先や品名を伝票の形に並べ替えて出す。出てきた伝票を、指定のフォーマットに通そうとしたら、弾かれた。

  3. 03送ったはずの合図が、消えていた——経路の途中で、情報は落ちる

    予約ページに、二つの入口を作っていた。ひとつは通常の予約、もうひとつはイベントの予約。同じページを使い回し、リンクに「これはイベント用」という合図を一つ付けて、開いたときに切り替える。そういう仕組みだった。

  4. 04同じ申込が、二回届いた——二度押される前提で、作り直す

    「確認のメールが、二通来ました」。お客様からそう言われて、記録を見た。たしかに、まったく同じ申込が、ほんの一秒ほどの差で、二件並んでいた。

  5. 05時刻だけのはずが、百年以上前になっていた——表計算が覚えている、見えない日付

    受け取り希望の時間を、お客様に選んでもらう。「13:00」とか「16:30」とか。それを表計算シートに記録して、あとで通知に載せる。単純な話のはずだった。

SERIES 16

地域ニュースポータル制作記 — 全 5 記事

Vol.45 地域ニュースポータル制作記 Vol.1 紙媒体を、ポータルに作り替える
  1. 01紙の地域情報を、ポータルに作り替える——何を載せる場所かを、先に決める

    長く続いてきた地域の情報紙がある。町のできごと、店の話題、暮らしの知らせを、紙で届けてきた媒体だ。その会社から、Webサイトを新しくしたい、と相談を受けた。

  2. 02一つのサーバーが、サイトもAPIも画像も返す——小さく保つという選択

    サイトの中身が決まると、次は動かす仕組みだ。記事を出すAPI、広告を受け付ける入口、投稿された画像の置き場。役割で数えると、けっこうな数になる。

  3. 03広告は、載る前に一度止める——外から入るものは、既定で世に出さない

    広告主が、自分で広告を投稿できる。この入口を作るとき、いちばん時間をかけたのは、投稿された広告を「すぐには載せない」仕組みだった。

  4. 04二つ目のワーカーが、ログインを弾いた——状態をプロセスの中に持つと、増やせない

    管理画面のログインは、あっさり動いていた。パスワードを入れると入れて、しばらく操作でき、時間が経つと切れる。試したときは、何の問題もなかった。

  5. 05編集部に、AIを八つ渡した——賢さより、外さないことを設計する

    サイトが動きはじめてから、編集部の仕事を軽くするために、AIをいくつか組み込んだ。数えると、八つになった。派手な一つの機能ではなく、日々の作業のあちこちに、小さく差し込んでいった。

SERIES 17

卸売受注AI制作記 — 全 4 記事

SERIES 18

支援ナレッジ検索制作記 — 全 3 記事

SERIES 19

出荷データ変換制作記 — 全 4 記事

SERIES 20

データ層引っ越し制作記 — 全 5 記事

Vol.49 データ層引っ越し制作記 Vol.1 表計算をやめて、データベースへ
  1. 01表計算が、だんだん遅くなってきた——数年分の記録が溜まった先で

    ある習い事教室の、入退室のお知らせの仕組みを、数年前に作った。子どもが教室に着くと、タブレットで名前を押す。すると家族のスマホに、着きましたと届く。帰りも同じ。小さな仕組みだが、毎日使われている。

  2. 02画面は、一つも変えない——裏側だけを、こっそり入れ替える

    引っ越しを始めるとき、自分に一つ縛りをかけた。使う人が触る画面は、一つも変えない。タブレットも、管理画面も、家族に届くお知らせも、これまで通り。変えるのは、その裏でデータを出し入れしている部分だけにする。

  3. 03パスワードを、作り直させない——引っ越しで、家族に何も頼まない

    引っ越しで、いちばん気を遣ったのが、ログインのパスワードだった。教室のオーナーは、それぞれ自分のパスワードで管理画面に入る。裏側を入れ替えたとき、そのパスワードが使えなくなったら、全員に作り直してもらうことになる。

  4. 04お知らせの受け口を、自分の側に持つ——仲介役を、一つ減らす

    この仕組みでは、家族が使うメッセージアプリを通じて、二つのことをしている。一つは、着きました・終わりました、というお知らせを送ること。もう一つは、家族からの登録や停止の連絡を、受け取ることだ。

  5. 05たった一つのファイルを、守る——表計算をやめて、背負った責任

    引っ越しが終わって、一つ、はっきりと変わったことがある。これまでデータは、クラウドの表計算にあった。オーナーも中を見られたし、いざとなればそこに残っていた。引っ越し後、データは、自分たちのサーバーの中の、一つのファイルにまとまった。

SERIES 21

SNS自動投稿制作記 — 全 5 記事

Vol.50 SNS自動投稿制作記 Vol.1 投稿を、仕組みに任せる
  1. 01投稿が続かない、を仕組みで解く——文章と画像を、機械に任せるまで

    ある施工サービスの会社から、SNSでの発信を増やしたいという相談を受けた。伝えたいことは二つある。一つは、施工を頼みたい人に向けた案内。もう一つは、一緒に施工を担ってくれる仲間の店を増やす募集だ。どちらの投稿も、その先には公式のメッセージアプリやサイトの窓口が待っている。

  2. 02全部は、自動にしなかった——最後の一目だけ、人に残す

    下書きを自動で作る仕組みはできた。次に決めるのは、その下書きを誰が世に出すかだ。技術的には、生成から投稿まで人を挟まず全自動にできる。実際、最初はそのつもりで作り始めた。けれど途中で立ち止まり、一か所だけ人を残すことにした。投稿する直前の、承認だ。

  3. 03撮影せずに、動画を作る——一枚目が、白紙だった話

    SNSでは、静止画より短い動画のほうが人に届きやすい、と言われている。ただ、動画には撮影という壁がある。現場は毎日忙しく、撮影を頼める体制はない。手元にあるのは、施工の前と後の写真と、現場の写真が数枚だけ。

  4. 04ボタンの向こうで、時間切れ——重い仕事は、受付と分ける

    承認画面には、動画をその場で作り直すボタンを付けてあった。ある日、それを押すと、しばらく待たされた末にエラー画面が出た。時間切れ、という素っ気ない表示。何度押しても同じだった。

  5. 05反応の数字を、次の投稿に返す——届く投稿と、効く投稿は違った

    投稿が自動で続くようになると、次の関心は、どの投稿が効いているのかに移る。感触で語ることはできる。けれど感触は、たまたま目にした一件に引きずられる。数字で見たかった。一人で回している仕組みだからこそ、判断の根拠は、自分の感覚の外に置いておきたい。

SERIES 22

ギャラリーEC制作記 — 全 4 記事

Vol.51 ギャラリーEC制作記 Vol.1 小さな画廊に、売り場をつくる
  1. 01小さな画廊に、売り場をつくる——決済の準備を待たずに、店を開けるまで

    ある観光地の、有名な名所のすぐそばに、小さなギャラリーがある。色彩を専門にしてきた店主が、絵画や工芸品を展示して売る店だ。サイトはすでにあった。既製のホームページ作成サービスで作られたもので、店の紹介としてはよくできている。ただ、そこには売り場がなかった。作品を気に入った人が、その場で買う手段がないのだ。

  2. 02冷たい、と言われた——立派なお手本ほど、正しいとは限らない

    七月の頭、デザインを大きく作り替えた版を見せた日のことだ。世界的に有名なギャラリーのサイトを手本に、余白をたっぷり取り、色をほとんど消した、真っ白でミニマルな画面。我ながら垢抜けたと思っていた。返ってきた言葉は短かった。冷たい、いまいち。その日のうちに撤回した。

  3. 03店主が、自分で更新できるように——サーバーに縛られない管理のかたち

    サイトの公開から一週間ほどたったころ、作りを左右する話がひとつ決まった。このサイトは、将来、いまのクラウドから格安のレンタルサーバーへ引っ越す可能性があるという。ならば、特定のサーバーの機能に寄りかかった作りにはできない。そしてもう一つ。作品の入れ替えや展示の告知は、制作側を経由せず、店主が自分の手でできるようにしたい。頼まれるたびに私が動くのでは、更新はいつも後回しになる。この二つを同時に満たす方法を考えた。

  4. 04見せ方と、売り方のあいだ——ギャラリーらしさと、買いやすさの綱引き

    一度、作品一覧のカードを、美術館のラベル風に作り替えたことがある。中央寄せで作品名と作家名だけを静かに置き、価格は小さく、カートに入れる、の文字は控えめなテキストに。売り場の気配をあえて薄めて、展示室の空気に寄せた。ギャラリーなのだから、売り込みがましくない方が上品だろう、という判断だった。だが、それは作り手の思い込みでもあった。

SERIES 23

記事配信制作記 — 全 4 記事

Vol.52 記事配信制作記 Vol.1 新着を、待たずに届ける
  1. 01新着を、待たずに届ける——既存サイトはそのまま、裏側だけ足す

    ある地域情報紙から、相談を受けた。サイトに載せた新着記事を、メッセージアプリの公式アカウントにも流したい。読者が毎日サイトを見に来てくれるとは限らない。向こうから届けば、読まれる機会は増える。ただし、いま動いているサイトには手を入れたくない、という条件付きだった。長年動いてきたサイトである。触らずに済むなら、それに越したことはない。この制作記は、その配信の仕組みを設計し、作り、動かすまでの記録だ。

  2. 02「記事」という分類は、使われていなかった——0件の謎を追う

    仕組みの骨組みができて、試運転を始めた。実際には送信せず、取得と整形だけを試す空振りの運転で、まず対象の記事が正しく拾えるかを確かめる。対象は、サイトの区分でいう記事・告知・求人・連載・特集の五つ。伝言板だけは除く取り決めだ。ところが、記事の分類で絞り込んで取得すると、返ってくるのが0件。サイトには今日も新しい記事が並んでいるのに、である。

  3. 03全自動を、やめる——配信の前に、人の目を通す

    新着を拾い、カード型のメッセージに整え、自動で配信する。そこまで動くようになった稼働の直前で、立ち止まった。本当に、拾ったものを無条件に送っていいのか。相手は情報紙の公式アカウントで、届いた瞬間に読者のスマホが鳴る。間違いは取り消せない。完成間際の方針転換にはためらいもあったが、確認と承認を挟んでから配信する形に変えると決めた。あわせて、送る記事の種別を選べるようにしてほしい、という要望にも応えることにした。

  4. 04動かして、はじめて分かる——実機確認の報告に応える

    本番稼働からしばらくして、クライアントから動作確認の報告が届いた。丁寧に試してくれた形跡のある、具体的な報告だった。不具合が二件、要望が一件、それに気になる点が一つ。作った側の試験では見えなかったものが、使う側の目には最初の数日で見えている。ありがたい報告である。一つずつ応えていった。

SERIES 24

デジタル模型制作記 — 全 5 記事

Vol.53 デジタル模型制作記 Vol.1 画面の中で、模型を組む
  1. 01画面の中で、模型を組む——最初の壁は、技術ではなく権利だった

    2026年、私はパソコンの画面の中でプラモデルを組んでいた。マウスでパーツをつまみ、所定の位置まで運ぶと、カチッと音がして嵌まる。左には設計図があり、いま組むべき工程の番号が金色に光る。起動すると、箱を開ける演出まで付いている。誰かに売るものではなく、思いつきを形にしただけの試作品だ。それでも、画面の中で模型が組み上がっていく感触には、妙な手応えがあった。

  2. 02難しさは、パーツの数で作る——増やすのではなく、束ねる

    権利フリーの方針を決めたあと、要件定義を書いた。軸に据えたのは「難易度はパーツの数で作る」という一行だ。試作の画面で百個近いパーツを眺めながら考えていた。初めての人にこの数は多すぎるし、慣れた人に十個では物足りない。同じ題材を、易しくも難しくも遊べるようにしたい。

  3. 03平面を捨てて、立体へ——パズルに見えたものを、模型に変える

    遊びの骨格は通った。難易度も、コレクションも、壁紙も動く。それでも、触るほどに一つの引っかかりが育っていた。これは模型というより、平面のパズルに見えるのではないか。絵合わせと模型の間には、埋めがたい溝がある。平面のまま、どれだけ見た目を磨いても、その溝は越えられない気がした。思い切って、本物の立体に踏み込むことにした。

  4. 04リアリティは、アセットで決まる——描画ではなく、素材が本物をつくる

    立体になったのは良かったが、まだ玩具に見える。「実物そのものと見紛うくらいでないと、売り物にはならない」。そう突きつけられて、私はしばらく描画の設定をいじり続けた。光の当て方、影の濃さ、映り込み。数字を細かく詰めれば詰めるほど本物に近づくはずだと、そう思い込んでいた。だが、いくら詰めても、玩具は玩具のままだった。

  5. 05写真から、自分だけのキットを——手元の宝物を、模型に変える構想

    ここまでは、こちらが用意した題材を組む話だった。最後に、この試作でいちばん賭けている構想を書く。使う人自身の写真から、その人だけの模型を作る。棚に飾った思い出の品でも、可愛がっている乗り物でも、自分の手元にあるものが、画面の中で組み立てられるキットに変わる。目指しているのは、そういう遊びだ。

SERIES 25

DBなしブログ制作記 — 全 4 記事

Vol.54 DBなしブログ制作記 Vol.1 データベースを使わずに、ブログを持つ
  1. 01データベースを使わずに、ブログを持つ——月百円の器に、身の丈で収める

    ある在宅訪問の管理栄養士から、サイトに栄養コラムを載せたい、と相談を受けた。作って終わりではなく、これから先、本人が思い立ったときに自分で書き足していける形にしたい。小さな事務所だ。維持費は極力かけたくない。この二つの条件が、作りの前提を最初から決めていた。ブログという、ありふれた機能を、どれだけ身軽に持てるか。そこが勝負だった。

  2. 02書いたら、静的なページに焼く——見る側は速く、書く側は普通に

    データベースを使わないと決めたあと、次の問いは「見せ方」だった。記事を毎回その場で組み立てて返す作りにすると、閲覧のたびにサーバーが働く。安い器では、それが遅さや不安定につながりやすい。訪問の合間にスマホでコラムを開く人に、待たせたくはない。そこで選んだのが、書いた瞬間に、表示用のページをあらかじめ作り置きしておく方式だった。

  3. 03引っ越せる身軽さと、自前の入り口——どのサーバーでも、同じ手順で

    安い器で始めたが、事業が育てば、いずれ上位のサーバーへ移りたくなるかもしれない。そのとき、いまの作りが特定のサーバーの機能に根を張っていると、引っ越しは難儀する。だから最初から、どこへでも持っていける身軽さを設計に織り込んだ。あわせて、管理画面の入り口である認証も、外の仕組みに頼らず自前で用意した。この二つは、別々のようでいて、同じ「縛られない」という一本の方針から出ている。

  4. 04写真は、二段構えで安全に——差し込みやすさと、守りを両立する

    ブログで一番気を遣ったのは、写真の扱いだった。栄養コラムなら、料理や食材の写真が主役になる。記事の頭に大きく一枚、本文の途中にも何枚か。書く人が迷わず差し込めて、なおかつ、危ない使われ方をしない。この二つを同時に満たすのが、思いのほか難しい。手軽さに寄せれば穴が空き、守りに寄せれば使いにくくなる。その綱引きの記録だ。

SERIES 26

個人サロンLP制作記 — 全 4 記事

Vol.55 個人サロンLP制作記 Vol.1 一枚だけの、店のページ
  1. 01一枚だけの、店のページ——予約は、外にお願いする

    小さな個人サロンの経営者から、お店のウェブページを作ってほしいという相談を受けた。話を聞くと、最初は無料のサイト作成の道具を使って自分で組もうとしたが、思うようにならず、それなら任せたい、というかたちで来た。要望は三つあった。地図と、メニューの一覧と、雰囲気の分かる写真を載せたい。予約はすでに公式のメッセージアプリを使っているから、それはそのまま活かしたい。予算はあまりかけたくない。

  2. 02画像を、ページの中に貼り込む——一つのファイルに、店の景色を閉じる

    ページの中身が形になってきたところで、写真の扱いに手をつけた。経営者から受け取った写真は、店内の様子と、施術の場面と、使っている道具の三種類、合わせて数枚あった。これを、ページの一部として、そのまま並べたい。ふつうなら、写真はページとは別のファイルとして持ち、ページを開いた側の機械が、写真を後から取りに来る。その取りに来る回数を、できるだけ減らしたかった。

  3. 03検索から来ない人にも、届く工夫——ページの裏に、店の情報を書き添える

    一枚のページが形になった。あとは、このページを誰にどうやって見つけてもらうか、を考える段になった。地域の小さな個人サロンでは、検索の結果で目立つ位置を取るのは難しい。強い会社が上に並んでいて、そのすぐ下に個人の店が食い込むのは、なかなか厄介だ。ならば、検索の結果に入り込めなかった人にも、店にたどり着いてもらう道を、いくつか作っておこうと考えた。

  4. 04静かなインスタ——生きた埋め込みを、あえてやめる

    お店のページには、SNSの最新の投稿をそのまま表示するかどうか、いつも悩ましい問いがある。開いた人に「今も生きているお店だ」と伝わりやすいし、更新の手間もない。ただ、その気軽さの裏には、いくつかの割に合わない負担が隠れていた。今回のお店では、生きた埋め込みをあえてやめて、静かな写真を三枚だけ置く形にした。

SERIES 27

公開前検証制作記 — 全 5 記事

Vol.56 公開前検証制作記 Vol.1 出す前に、壊しておく
  1. 01正常に動くことを確かめても、出せなかった——壊れ方を、先に作る

    画面いっぱいに、通過の文字が並んだ。二十八件、失敗ゼロ。利用者が画像を送り、AIが立体のデータを組み立て、手元に届くまでの道筋が、ひととおり動いた。それでも、公開の手を止めた。動くことは確かめた。けれど、動かなかったときにどうなるかを、まだ何も確かめていなかった。

  2. 02終わった記録は、書き換えさせない——守りを、アプリの外側に置く

    仕上がった一件ぶんの記録を眺めていた。どの画像を材料にしたか、どの道具のどの版で組み立てたか、途中でどんな判定を通ったか、出来上がったものの指紋はどれか。ここまで残っていれば、後から何を聞かれても答えられる。問題は、この記録が、その気になれば書き換えられることだった。

  3. 03同じ名前でも、中身は変わる——使ったAIの版を、数字で固定する

    昨日まで動いていた組み立て処理が、ある朝、立ち上がらなくなった。設定は変えていない。書いたコードも触っていない。調べていくと、土台にしている読み込み用の部品が、新しい系統に上がっていた。新しい系統では、モデルの内部構造の呼び名が変わっていて、こちらが触ろうとしていた層が、そもそも存在しなくなっていた。

  4. 04作ってあるのに、動かさないまま出す——止まっていることを、証拠に残す

    公開の日取りを決めたとき、機能の一覧を眺めて、一つだけ線を引いて外した。出来上がっている、試験も通っている、けれど公開初日には動かさないと決めたものがあった。作った成果物をそのままSNSへ流す仕組みだった。

  5. 05鍵をかける前に、隠す——管理画面を、外から見えなくする

    公開の準備で最後に残ったのは、自分しか使わない画面だった。注文の状態を見たり、公開してよいものを選んだりする管理の画面が、利用者向けのサイトと同じ入口にぶら下がっていた。認証はかけてある。それでも、住所さえ分かれば、誰でもそのログイン画面までは辿り着ける状態だった。

SERIES 28

まちのスタンプラリー制作記 — 全 5 記事

Vol.58 紙の提案に、動くものを添える
  1. 01提案書に、動くものを添える——紙のままでは決められない

    提案の資料は一式そろっていた。企画提案書、システム要件定義書、概算見積、それらを束ねた統合資料。地域の商工団体へ出す、まちぐるみのスタンプラリーの提案だった。参加する店はおよそ百二十。真冬の…

  2. 02貼るだけの札に、鍵をかける——店員の操作を、前提にしない

    店にお願いするのは掲示物を貼ることだけ、と決めた瞬間に、難しい問題が一つ残った。貼ってあるだけの札は、誰でも撮れる。撮った写真は、そのまま人に送れる。店に行かずに印が入る道が、設計上いちばん…

  3. 03刷った符号が、読めなかった——四十枚のうち、三枚

    店頭に貼る掲示物を四十枚ぶん出力した。A5の紙面に店の名前と遊び方を載せ、真ん中に符号を置いた形だ。出したあと、念のために画像から符号を読み直して確かめた。四十枚中、三枚が読めなかった。画面…

  4. 04疑わしきを、自動では止めない——点数ではなく、理由を残す

    札の写真が共有されうる、という残ってしまうリスクをそのまま抱えたまま、次に考えたのは見つけ方だった。完全には防げないのなら、起きたときに気づけて、気づいたあとに手を打てる形にしておくしかない…

  5. 05本番の住所で、初めて出た——手元では、速すぎて見えない

    一式ができたので、確かめる工程に入った。要件定義書に並べた受け入れ条件の番号を、そのまま試験にした。二十二項目。あわせて、実際のブラウザで四つの画面を通しで操作して回る検査も書いた。こちらは…

SERIES 29

動画自動公開制作記 — 全 5 記事

Vol.59 毎朝七時に、一本ずつ
  1. 01毎朝七時に、一本ずつ——押し忘れても、事故は起きない

    午前一時三十九分、私は「何をするか見るだけ」のつもりで一行を打った。作らない、上げない、公開しない。そういう印を付けたはずだった。ところがその回は、本当に公開された。予定は同じ日の朝七時で、…

  2. 02三つの関門——書き方と、読み違いと、中身

    私が書いた台本には、原典と逆のことが書いてあった。競争の型を扱った古典の回で、買い手が強くなる条件を、買い手にとっての購入金額が小さいとき、と説明していた。原典は逆で、買い手の費用に占める割…

  3. 03読みは、理屈では決まらなかった——聞き比べでしか決まらない

    読み上げに渡す台本には、読みを指定できる。表示はこの字、読みはこの音、と書き分ける仕組みだ。私は当初、数字は読み側を漢数字にする、という規則を作っていた。ある日、同じ文を九通り作って聞き比べ…

  4. 04縦を、横で上書きした——完成と出ても、何が完成したかは見ていない

    短い動画は縦、本編は横で作る。道具も別で、縦のほうは一つ走らせれば動画まで出来上がる。私はある日、時間を惜しんで手順を手で並べ、本編と同じ流れを縦の動画にも当てた。縦で出来たものの上に、横で…

  5. 05消えるものと、消えないもの——上げ直しの費用を数える

    語り手の絵柄を替えた。一日のうちに四回替わって、年齢相応の五代目に落ち着いた。問題はその後で、すでに公開した回をどうするかだった。私は、公開済みの本体は差し替えない、と決めた。

SERIES 30

老舗小売サイト制作記 — 全 4 記事

Vol.61 写真が一枚もないまま、店を建てる
  1. 01写真が一枚もないまま、店を建てる——質感は、書式で作る

    百年をゆうに超えて続く、街の小売店のウェブサイトを作り直すことになった。元のサイトは、書いてある事実そのものは正確だったが、体裁がひと昔前のままで、携帯電話で開くと文字が小さく、横に滑らせな…

  2. 02四つの商売を、一枚に詰め込まない——入口を、客ごとに割る

    この店には、四つの商売が同居している。酒。学校の制服と体育衣料。贈答品。そして健康食品。一つの店でありながら、扱っているものの系統がまるで違う。作り直しの前のサイトは、この四つが一枚のページ…

  3. 03事実は、一字も足さない——古いサイトから、条件を落とさない

    作り直しでいちばん危ないのは、見た目を整えるついでに、情報を整理してしまうことだと思っている。古いサイトは、たしかに読みにくい。文章が長く、注意書きが多く、否定形が並ぶ。だから新しくするとき…

  4. 04売り場は作らず、法定の表記だけ先に書く——借り物は、二つに絞った

    このサイトには、買い物かごも決済もない。値段を並べた商品の一覧すらない。それなのに、特定商取引法に基づく表記のページは作った。矛盾しているように見えるが、そうではない。順序として、こちらのほ…

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