「Coolな感じで。テーマカラーは赤・黒・白」
依頼はそれだけだった。画家・その画家さんのウェブサイトを作り直す。現在のページを参考に、と。
赤・黒・白。アート系のサイトでこの三色と言われたら、最初に浮かぶのは黒背景だ。白い余白に作品が浮かび、赤がアクセントで刺さる。展示室の暗がりのような、静かで強いトーン。私はそれで一度組んだ。
黒は、強い。強すぎた。
黒をやめて、白にした
組み上がった黒背景のページを送ると、返ってきたのは「背景を白基調に変更してください」だった。
最初は少し惜しいと思った。黒の上で作品の赤が燃えるあの感じを、自分は気に入っていたから。けれど画面を白に置き換えてみて、すぐに分かった。画家のサイトは、白がいい。
理由は単純で、作品が絵だからだ。絵には絵自身の色がある。背景が黒だと、画面全体がギャラリーの照明演出になって、作品の色がそこに飲み込まれる。白い壁に額装を掛けるように、背景を引かせると、絵そのものの赤や青が前に出てくる。
--bg を #080808 から #f7f4f0 に変えた。真っ白ではなく、ほんの少し温度のあるオフホワイト。文字は黒に近い #1a1a1a、アクセントだけ赤を残した。三色のうち、黒は「背景」から「文字」へ役割を移した。
捨てたのではない。置き場所を変えただけだった。
ヒーローに、絵を描く写真を置いた
トップに何を置くか。画家のサイトで一番迷うのはここだ。
作品を大きく見せる手もある。けれど送られてきた写真の中に、モノクロで、キャンバスに筆を入れている一枚があった。顔は伏せられ、手元だけが動いている。これだ、と思った。
作品ではなく、作品を生む手。それを画面の右六割に全高で敷いて、左にグラデーションで影を落とし、そこに名前を置いた。タグラインは、ちょうど開催中だった個展のタイトルをそのまま借りた。
「赤より深く、白より遠い」
サイトのテーマカラーと、その言葉が、偶然きれいに重なっていた。赤と白。深さと遠さ。コピーを考える必要はなかった。すでに本人が、一番いい言葉を持っていた。
作り手のサイトは、作り手の言葉でできている。私がやったのは、それを白い壁に掛け直しただけだ。
次回は、その作品をクリックで拡大しようとして、なぜか何も起きなかった話を書く。原因は、デザインではなかった。
シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦