実際に試した。
4社の本物の帳票をClaude Vision(claude-opus-4-8)に読み取らせて、結果を確認した。「精度は帳票によって大きく違う」という予想は当たっていた。どの帳票が得意で、どこで失敗するか。実験の記録を残す。
A社:カレンダー形式は高精度
A社の月間カレンダー形式は、Claude Visionがよく読めた。
縦が日付で横が商品という空間的な構造を、文脈から正確に理解する。「この行はX日であり、この列の商品はYであり、セルの値はZである」という多次元の推論が得意だ。
誤認識が起きたのは単位の漏れだった。数量の隣に小さく「kg」「本」と印刷されている部分が抜けることがあった。プロンプトに「単位も必ず読み取ること」を追加して改善した。
「8*30」のような計算式が書いてあるセルも「240」と計算して返す。人間が読んでも計算が必要なため、これは素直に便利だった。
B社:手書きは中程度
手書き帳票の精度は落ちる。
文字の癖・インクの濃淡・紙の傾き。帳票を送るたびに条件が変わる。B社の帳票では「商品名の誤字」と「1行の読み取り漏れ」が発生した。手書きの「ソ」が「ス」に化けるような誤読だ。
改善策として「商品名の候補リスト」をプロンプトに渡した。「取り扱い商品は以下のリストから選んでください」と候補を与えると、似た文字の誤読が減る。完全にはなくならないが、減る。
C社:複数店舗・手書き混在は難しい
C社の帳票は4社の中で最も複雑だ。
北店・南店・西店の3店舗分が1枚に書かれており、それぞれ日付と数量の欄がある。印刷と手書きが混在する。
実読取で「日付の取り違え」と「どの数値がどの店舗の分か」という対応関係の誤認識が起きた。「この帳票は3つのセクションに分かれており、上部が北店・中部が南店・下部が西店の発注です」という説明をプロンプトに追加することで、精度が上がった。構造を言葉で説明することが有効だった。
D社:丸印方式は最も難しい
D社の帳票はJANコード付きの印刷フォームで、数量欄に丸印を押す。「3の欄に丸が押してある」ということを読み取る必要がある。
2つの問題が出た。1つは取引先名の認識漏れ。会社名がロゴとして別の場所に入っており、取引先として認識されなかった。もう1つは丸印の位置認識。丸印が印刷された枠線に少しかかると、どの数量欄に対応するか判断が難しくなる。
対策として「取引先名は別途指定する」「丸印の付いた列の数字を読み取ること」を明示的に指示した。問題はゼロにならないが、確認UIが後ろで支えている。
精度の差が設計を決めた
| 取引先 | 精度 | 主な誤認識 ||---|---|---|| A社 | 高 | 単位の漏れ(プロンプト改善で解消) || B社 | 中 | 商品名誤字・1件漏れ || C社 | 中 | 日付・数量の対応関係 || D社 | 低 | 取引先名・丸印位置 |
精度に差があるとき、「確認UIがその差を吸収する」設計にする。精度が高い帳票は確認が楽で、精度が低い帳票は確認が必要な行が多い。システムが「要確認」を教えてくれれば、担当者は必要な行だけ集中できる。
確認UIの設計を次の記事に書く。
*次回は「確認画面のUX設計——信頼度・要確認フィルタ・一括OK」*
*シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦*