診断のフォームを作っていて、ずっと迷っていた一点があった。メールアドレスを、どこで訊くか、だ。
最初に訊けば、確実に連絡先が手に入る。けれど、まだ何も返していない段階で個人情報を求められると、人は引く。後にすれば、登録は減るかもしれないが、訊くだけの理由は作れる。この順番を、何度も入れ替えて考えた。
入口でメールを求めると、人は引く
結論から言えば、入口ではメールを求めないことにした。
入口の速報は、六十秒。四つか五つの質問に答えてもらうだけだ。ここで会社名やメールを求めると、答えてもらう前に閉じられてしまう。入口の仕事は、まず「これは自分の会社の話だ」と感じてもらうこと。連絡先は、その後でいい。
選んでもらう負担も、できるだけ軽くした。どの業務を減らしたいか。月にどれくらいあるか。今は紙か、FAXか、メールか。それくらいの選択だけで、最初の結果を返す。
価値を見せてから、訊く
メールを訊くのは、詳細な質問に答えてもらい、こちらで計算できる材料がそろった時点にした。
そこまで来ると、相手はもう、自分の数字を入力している。件数も、時間も入れている。その入力が形になる手前で、「ここから先は、保存して、続きをメールでお送りします」と伝える。自分が入れた情報に価値があると分かったあとなら、登録する理由がはっきりする。最初に訊くより、ずっと自然だった。
予告で、何が手に入るかを見せる
登録の直前に、これから何が手に入るかを、できるだけ具体的に出すようにした。
「対象になりそうな業務で、月にこれくらいの時間を確認しました。業務別に削減できる時間、年間の人件費換算、優先順位、三十日の検証案を作成できます」。抽象的な「詳しく診断する」ではなく、出てくる成果物を名指しで見せる。先に価値を約束してから、連絡先をいただく。
連絡は、メールを主にする
連絡手段は、企業のメールを主にした。
PDFを送る、続きのリンクを送る、見積や契約につなぐ。どれもメールが一番素直だ。LINEは、再訪のお知らせくらいに留めて、診断記録の唯一の保管先にはしない。企業を相手にする以上、正規の手続きはメールとWebに戻す、と決めた。電話は、よほど確度の高い相手のときだけ任意で訊き、入力を強制しない。同意の確認だけは、必ず取る。
一つ、自分への戒めもあった。送ると言ったものは、本当に送る。予告で見せた完全版のレポートも、続きのリンクも、登録したその場で実際に届くようにする。約束だけして中身が来なければ、価値を見せた意味がない。
登録のあとは、放っておかない
連絡先をもらったら、そこからが本番だった。
登録したその場で、完全版のレポートと、続きを再開できるリンクを送る。翌日には、その業務で気をつけるべき例外のパターンを送る。数日後には、同じ業種での進め方と、よくある失敗を送る。一週間ほどで、費用と効果の見え方、そしていくつかの実施案を送る。返事がないままでも、未着手の理由ごとに、答えになりそうなものを並べておく。
人が一件ずつ追いかけるのではなく、相手の状態に合わせて、必要なものが順番に届く。無理に急かすのではなく、相手が進みたくなったとき、すぐ次の一歩があるようにしておく。
次の回は、その先の話だ。資料を配って終わりだった無料の検証を、相手のデータをその場で通す「実体験」に作り替えた話を書く。