無人ファネルを作ると決めて、まず自分の診断の入口を、もう一度開いてみた。
匿名で三分。会社の業務がAIや自動化に向いているかを、ざっくり返す。動いてはいた。けれど、出てきた結果を読んで、手が止まった。そこに書かれていたのは、どの会社にも当てはまることばかりだった。
速報が、誰にでも当てはまることしか言えない
入口を広くしたのは、よかれと思ってのことだった。どんな業種でも、どんな規模でも使える診断にすれば、間口が広がる。そう考えていた。
ところが、間口を広げるほど、最初に返せる答えは薄くなる。相手の業種も、扱っている書類も、件数も分からないまま、三分で具体的なことなど言えない。「御社はAI活用に前向きなタイプです」。そんな、誰に出しても角の立たない一文を返すのが精一杯だった。
しかも困ったことに、その後の詳細診断と、入口の速報が食い違うことがあった。入口で広く受けて、奥で絞る。その段差が、判定のずれになって出ていた。
「何でもAI」をやめる
考え直した。万能の診断を一つ作ろうとしていたのが、そもそもの間違いだった。
「何でもAI」は、結局、誰の課題にも刺さらない。私が相手にすべきなのは、AIを使いたい人ではなく、減らしたい仕事を抱えている人だ。だとすれば、入口は「AIに興味がありますか」ではなく、「この仕事、まだ手でやっていませんか」でなければいけない。
市場も絞った。広く薄くではなく、定型業務を大量に抱える中小企業。従業員が五十名くらいまでで、専任のIT担当がいない。製造業や卸売業に多い。そういう相手に、的を絞る。
一つの業務から、始める
最初の業務テーマを、一つに決めた。FAX、PDF、メールで届く注文書を、担当者がExcelや基幹システムへ手で打ち直している、あの作業だ。
これを選んだのには理由がある。件数も、一件あたりの時間も、入力ミスも、確認の手間も、全部数字で測れる。月に百件を超える会社なら、効果が金額で見える。「AIを使いたい」という曖昧な動機ではなく、「受注処理を減らしたい」という、はっきりした困りごとに話しかけられる。
入口を一つに絞ると、返せる速報も具体的になる。どの業務を、どれくらい、どう減らせそうか。相手が「これは自分の会社の話だ」と感じられる結果を、ようやく返せるようになった。
対象にしない案件も、先に決める
絞るというのは、やらないことを決めることでもあった。
最初から対象にしない案件も、はっきりさせた。件数が少なくて、削減の効果が料金を下回るもの。採用や与信、医療、法務のように、AIの判断が重大な結果を持つもの。基幹システムの大きな改修や、独自の連携がいくつも前提になるもの。目的が曖昧で、対象の業務も入力も出力も決められないもの。これらは、無理に受けない。
受けない線を引いておくと、入口の設計がぐっと楽になる。来たもの全部に応えようとするから、診断が薄くなる。応える相手を決めれば、その相手にだけ、深く応えられる。
入口は容易に、結果は具体的に
ただし、絞ることと、間口を閉じることは違う。
やったのは、万能の入口を一つ置くのをやめて、業務テーマごとに専用の入口を用意し、その奥で同じ診断エンジンにつなぐ、という形だ。利用者から見れば、自分の困りごとに直結した入口がある。中では、共通の仕組みが動いている。
入口は容易に、結果は具体的に。この一行を、ファネル全体の方針にした。広げるのは集客の話で、絞るのは価値の話だ。両方を、別々に設計する。
次の回は、その入口で、いつ連絡先を訊くか、という話を書く。最初に求めるのか、価値を見せてから求めるのか。一つの判断で、登録率はずいぶん変わった。