「講師が一人ひとりの計画書を丁寧に見る時間は限られています」
ある創業カレッジの担当者との会話で、その言葉が出た。その市が運営する創業支援講座だ。受講者は事業計画書を書く課題を出される。しかし提出件数に対して、フィードバックを返すための時間が圧倒的に足りない。
AIに第一次チェックを任せてみたらどうか。そういう発想から、AiReviewは始まった。
受講者にとっての価値を先に考えた
「講師が楽になる」という観点ではなく、「受講者にとって何が変わるか」を先に考えた。
事業計画書を書いた後、フィードバックが届くまでに数日かかる講座では、書いた内容を忘れかけた頃に「ここが弱い」と言われる。改善の意欲が続かない。
AIが即座にフィードバックを返す設計なら、提出した数分後には詳細なレポートが届く。記憶が新鮮なうちに、具体的な改善点と向き合える。サイクルが早くなる。
これは講師のコスト削減よりも、受講者の学習体験の改善として位置づけた。
設計はシンプルに決まった
TypeFormで受け取り、GASがGemini APIを呼び、Google Driveにレポートを保存する。4ステップだ。
TypeFormを選んだ理由は、長文回答のUIとして優れており、Webhookが標準機能として付いているからだ。GASはGoogleのサービスとの連携が容易で、サーバーを別途用意せずに済む。
function doPost(e) {
const payload = JSON.parse(e.postData.contents);
const answers = payload.form_response.answers;
// ...
}
TypeFormのWebhook設定画面にGASのWebアプリURLを入れると、フォームが送信されるたびにdoPostが呼ばれる。
Gemini 2.5 Flashを選んだ判断
事業計画書の添削で求められるのは、5,000字以上の詳細なレポートだ。数百字の要約ではなく、「ここをどう書き直せばいいか」まで具体的に示す必要がある。
Gemini 2.5 FlashはmaxOutputTokensを16,000に設定できる。GPT-4系と比べてコストが低く、長文生成でも安定している。
const response = UrlFetchApp.fetch(
`https://generativelanguage.googleapis.com/v1beta/models/gemini-2.5-flash:generateContent?key=${GEMINI_API_KEY}`,
{
method: 'post',
contentType: 'application/json',
payload: JSON.stringify({
contents: [{ role: 'user', parts: [{ text: prompt }] }],
generationConfig: { temperature: 0.5, maxOutputTokens: 16000 }
})
}
);
GASからAPIを直接呼び出す。Geminiへのアクセスに専用のライブラリは不要で、URLFetchApp.fetchで事足りる。
「何を改善したいか」を選べる設計
受講者が一様に「添削してください」と言うわけではない。自分の計画書の「どこが弱いか」は人によって違う。数字が弱い人もいれば、戦略が曖昧な人もいれば、文章として説得力が足りない人もいる。
7種類の支援種別を定義した。受講者がフォームで選ぶと、その選択内容によってGeminiへのプロンプトが変わる。
- 数値の精緻化:売上・コスト・損益分岐点の分析、5,000字以上
- 戦略強化:競合比較・差別化・アクションプラン、4,000字以上
- 説得力強化:事業の必然性・実現可能性・収益性、5,000字以上
- 内容の充実(白紙):問いかけ・ガイド形式(架空計画書生成禁止)
- 品質向上:改善前→改善後の形式、3,000字以上
- リスク対策:リスク分析・法規制・対策、3,500字以上
「何のために添削するか」が明確になることで、AIも的確な方向に向く。
生成されたレポートの届け先
GASが生成した添削レポートは、Googleドキュメントとして受講者の名前・提出日時でフォルダ分けしてDriveに保存する。講師はそのDriveフォルダを見ることで、AIのレポートと受講者の回答原文を一か所で確認できる。
受講者にはGmailでDriveのリンクを送る。フォームを送信してから数分後には、詳細な添削レポートのURLが届く。
*次回は「Gemini 2.5 Flashで長文レポートを生成する——プロンプトエンジニアリングの実際」*
*シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦*