システムが動いてもコンテンツがなければ売れない。技術の話より先に、「何をいくらで売るか」「何を無料にするか」という設計の話をする。
noteを調べた
価格設定の参考にnoteの有料記事を調べた。
中小企業・DX・AI・システム開発をテーマにした有料コンテンツの相場はこうだ。単発記事:200〜500円。シリーズもの(5〜10記事):980〜1,980円。月額マガジン:500〜2,000円。
「AIで開発した」系のコンテンツで、具体的なコードや設計が含まれているものは500円前後が多い。ただし発信者の知名度によって大きく変わる。
私が出した結論は「単価は相場の中央値に合わせる」だ。高くして売れないより、適正価格で継続読者を作る方が長期的に正しい。
5記事セット500円に決めた根拠
「1記事100円」を5本まとめて500円という設計だ。
1記事100円は高くない。Webサービスの技術記事として考えると、30分で読める具体的な設計・失敗・改善の記録が100円は安い方だ。ただし「1記事だけ買って試す」という行動を促すには単価が低すぎる。
5記事500円にした理由は「購入判断のハードルを下げながら、まとまった体験を提供する」からだ。500円は昼食1食分だ。この金額なら「試しに買ってみる」という判断が起きやすい。1記事1,000円だと「本当に価値があるか」という確認行動が増える。
サブスクの980円
月額980円は、Spotifyの個人プランとほぼ同じ価格帯だ。「音楽サービスと同じくらい」という感覚的な比較を意図した。
サブスクを設計するとき、最も悩んだのは「このシリーズが終わったらどうするか」という問題だ。25記事が完結したコンテンツに月額料金を払い続ける理由がない。
解決策は「書き続ける」ことだ。1cto.jpは「1人のCTOが次々にシステムを作る記録」というコンセプトだ。DX経営ゲームの次は1cto.jp自体、その次はAI経営シミュレーション、顔認証システム、AIインタビューエンジン——作るものがある限りコンテンツが増える。サブスクは「新シリーズも含む」という価値で成立する。
何を無料にするかの判断基準
各シリーズの第1記事を無料にした。
無料サンプルの目的は「続きを読みたいと思わせる」ことだ。そのためには、第1記事が「最も入口として機能する内容」である必要がある。
DX経営ゲーム制作記の第1記事「なぜ数週間で作れたのか」は、このシリーズ全体のモチベーションを語る記事だ。「具体的に何をどうやったか」は第2記事以降に進む理由になる。
1cto.jp制作記の第1記事「なぜnoteを使わず自分で作ったのか」も同じ構造だ。「なぜ」を語る記事で入口を作り、「どうやって」は購入した人だけが読める。
全記事の20%(5本/25本)を無料にした。この比率はSaaSのフリーミアムモデルの設計を参考にした。多すぎると有料にする理由がなくなる。少なすぎると「試せない」という不安が残る。
アクセス制御の設計
購入した記事だけ読める仕組みは、3層で設計した。
第1層(API):記事の詳細を取得するAPIは、認証トークンと購入記録を確認してから本文を返す。ここが最も重要な制御だ。
第2層(フロント):記事一覧では、読めない記事に錠前アイコン(🔒)を表示する。クリックしても詳細ページに遷移しない。
第3層(DB):購入は purchases テーブルで管理する。巻単体・全巻セット・サブスクで判定ロジックが変わる。
設計で気をつけたのは「フロントだけの制御に頼らない」ことだ。JavaScriptで「このユーザーは購入済みか」を確認するだけでは、開発者ツールで判定をスキップできる。APIで必ず確認する設計にした。
価格設定を後から変えることを怖がらない
「最初から正しい価格にしなければ」という思い込みがある。実際は違う。
価格は変えられる。巻を500円で出して、1ヶ月後に需要があれば600円にしてもいい。サブスクを980円で始めて、読者が増えれば1,200円に変更してもいい。既存購読者へのサービスは維持しながら、新規読者への価格を調整する。
最初から完璧な価格を出すより、動かして反応を見て調整する。これはゲームのバランス調整と同じ考え方だ。
*次回は「1cto.jpを公開して最初に起きたこと——テスト購入・Webhookデバッグ・そして最初の読者」*
価格設定は「仮説」だという覚悟
コンテンツの価格は、出してみるまで正解が分からない。
5記事500円という設定は「仮説」として始めた。売れすぎたら単価が低すぎる。売れなければ価値が伝わっていないか、価格が高すぎる。データを見て判断する。これはゲームのバランス調整と同じだ。「正しいパラメータは動かしてから分かる」という姿勢で、価格も設定した。
*シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦*