ここまでは、こちらが用意した題材を組む話だった。最後に、この試作でいちばん賭けている構想を書く。使う人自身の写真から、その人だけの模型を作る。棚に飾った思い出の品でも、可愛がっている乗り物でも、自分の手元にあるものが、画面の中で組み立てられるキットに変わる。目指しているのは、そういう遊びだ。
写真や動画から、立体を起こす
仕組みの筋道はこうだ。何枚かの写真、あるいはぐるりと一周撮った短い動画から、立体を起こすAIに形を復元させる。動画は、素人でも被写体の全周を撮りやすいのが強みだ。起こした立体を、そのまま渡すのではなく、自動でいくつものパーツに割る。そして、これまで作ってきた難易度の束ね方を当てはめれば、易しくも難しくも組める、その人だけのキットになる。復元から分割まで、人の手を極力挟まない流れにしたい。
品質は、二段構えで正直に
ここで一つ、正直な線を引くことにした。品質を二段構えにする。こちらが手作りする公式のキットは、じっくり作り込んだ上質なもの。使う人の写真から起こすキットは、AIによる復元ゆえ、公式とは別の品質になる。今はまだ粗く、これから良くなっていく類のものだ。両者を同じ土俵で見せて落胆させるより、性格の違うものとして分けて届ける。手元の品が自分だけのキットになるという体験そのものに、まず価値を置く。
最初に、権利の線を引いておく
自分の写真を素材にできる仕組みは、放っておけば他人の権利を侵す道具にもなりうる。だから、線は最初に引いておく。取り込めるのは、自分が権利を持つ写真だけ。人気のキャラクターのような第三者の権利物は、見つけたら止める。作ったキットは個人で楽しむためのもので、配ったり売ったりはできない。公式のキャラクター素材も、こちらからは提供しない。後から付け足す安全策は、たいてい穴が残る。禁じ手を先に決めてしまうのが、いちばん確かだった。
まだ試作、それでも賭ける一点
正直に書けば、精密な百を超えるパーツを写真から自動で割るのは、まだ難所だ。当面は少ないパーツから始め、撮り方を案内し、精度は時間をかけて上げていく。それでも、この構想を捨てないのは、ここに一点の強さがあるからだ。自分の宝物が、自分だけのキットになる。既製の題材には決して出せない、その一点に賭ける価値がある。
平面のパズルから始まった小さな試作は、立体になり、質感を得て、いまや使う人の写真までを飲み込もうとしている。ここまでが、画面の中で模型を組む試作の第一巻だ。器はできた。ここから先は、素材を積み上げ、この構想を現実の精度まで押し上げていく仕事になる。