ある在宅訪問の管理栄養士から、サイトに栄養コラムを載せたい、と相談を受けた。作って終わりではなく、これから先、本人が思い立ったときに自分で書き足していける形にしたい。小さな事務所だ。維持費は極力かけたくない。この二つの条件が、作りの前提を最初から決めていた。ブログという、ありふれた機能を、どれだけ身軽に持てるか。そこが勝負だった。
いちばん安い器に、合わせて考える
置き場所として選んだのは、月に百円ほどで借りられる、いちばん安いレンタルサーバーだった。静的なページを置くには十分で、無料の暗号化通信も付く。ただし、この価格帯にはひとつ制約がある。データベースが使えないのだ。ブログといえば、記事をデータベースに溜めるのが当たり前の作り方だが、その当たり前が、ここでは使えない。器を先に決め、その器に機能を合わせる。逆ではない。安さを取るなら、作り方の方を寄せるしかなかった。
立派な仕組みは、身の丈に重すぎる
もちろん、広く使われている高機能なブログの仕組みを載せる手もある。だがそれには、より上位の契約とデータベースが要り、月々の費用が跳ね上がる。機能は有り余るが、この事務所が使うのは、記事を書いて、写真を添えて、公開する。ほぼそれだけだ。使わない機能のために毎月払い、更新のたびに気を揉むのは、身の丈に合わない。大きな道具は、持っているだけで負担になる。小さな用には、小さな道具を自分で作る方が、結局は軽い。
データベースが無いなら、ファイルに持つ
では記事をどこに溜めるか。答えは素朴だった。データベースの代わりに、一つのデータファイルに記事をまとめて持つ。書き込むときは、書きかけの途中で壊れないよう、いったん別名で全部書いてから、最後に丸ごと置き換える。万一その書き込みに失敗しても、前のデータには指一本触れない作りにした。溜め場所がファイル一つなら、仕組みは単純で、壊れる場所も少ない。データベースという重石を外したことが、この器全体の身軽さを決めた。
制約を、先に飲む
作りの出発点で大事だったのは、制約を後から嘆かないことだ。データベースが使えない。その一点を先に飲んでしまえば、あとは「無い前提で、どう成り立たせるか」という一本道の設計になる。豊かな環境を仮定して作り、あとで格安の器に押し込もうとすれば、必ず無理が出る。持てる器の内側で、必要十分を組み上げる。小さな店や小さな事務所の道具づくりは、たいていこの順番でうまくいく。
次の回は、データベースの無いこの器で、書いた記事をどうやって速く安定して見せたのか。静的なページに焼くという答えについて書く。