長く続いてきた地域の情報紙がある。町のできごと、店の話題、暮らしの知らせを、紙で届けてきた媒体だ。その会社から、Webサイトを新しくしたい、と相談を受けた。
紙には紙の強みがある。それをそのままWebに移しても、たぶん埋もれる。だから最初に考えたのは、デザインの前に、「これは何を載せる場所なのか」だった。
要件は、三つに絞れた
話を聞くうちに、載せたいものが三つに整理できた。
一つは、自分たちの媒体が取材した記事。二つは、その地域のニュース。三つは、広告主から寄せられる広告や告知。この三つが、一つの画面に並ぶ。それが、この会社にとってのサイトの姿だった。
三つとも「地域の情報が集まってくる」という点で共通していた。ばらばらの機能ではなく、同じ性質のものが三方向から流れ込む。それなら、器は一つでいい。
ニュースポータルという形
器の形は、ニュースポータルにした。
トップに新しい記事が並び、カテゴリで絞り込め、一本ずつ読める。ニュースサイトを見慣れた人なら、説明されなくても使える形だ。奇をてらわない。地域の情報が集まる場所は、まず「見つけやすい」ことがいちばんの価値だと考えた。
紙面をそのまま画像で貼るのではなく、記事は記事として、読める形に作り替える。紙の一覧性は残しつつ、Webの検索性を足す。二つのいいところを、無理なく重ねたかった。
作り方を、載せ方で分けた
三つの情報は、入ってくる経路が違う。だから、扱い方も分けた。
自分たちの記事と地域のニュースは、編集部が手で書いて載せる。数はそれほど多くないし、質を保ちたいからだ。一方、広告や告知は、広告主が自分で投稿する入口を用意する。ただし、そのまま公開はしない。ここは後の回でくわしく書く。
同じ「載せる」でも、誰が、どういう責任で載せるか。そこが違えば、仕組みも分ける。ひとまとめにしないほうが、あとで運用が楽になる。
器を決めると、迷いが減る
構想の段階で「何を載せる場所か」を決めておくと、その先の判断がぶれない。
新しい機能を思いついたとき、「それはこの器に合うか」で測れる。地域の情報を、見つけやすく集める。この一文に照らして、合わないものは足さない。作りたい機能ではなく、媒体の強みを伸ばす機能だけを選ぶ。
派手な入口から入ると、たいてい途中で迷う。だから私は、いつも器の形から決める。この会社の器は、三つの情報が集まるニュースポータルだった。ここが決まった時点で、作るものの半分は決まったようなものだった。
次の回は、その器を、どれだけ小さな仕組みで動かしたかを書く。