最終部を書くにあたって、もう一度、あの計算をした。契約が一件増えると、自分の時間が何分増えるか。
第1部のあの夜、同じ式を書いて、きれいな比例に青ざめた。第2部でも、何度か測り直した。そして今、また測る。数字は、あの頃よりずいぶん寝てきた。契約が増えても、私の時間は、前ほどは増えない。完全な水平ではない。でも、もう、まっすぐな崖ではなかった。
また、自分の時間を測り直す
私がいちばん信用している指標は、今でもこれだ。自分の時間の増え方。
売上も、アクセスも見る。でも、それらは、無人化が進んだかどうかを、正直には映さない。自分の時間の増え方だけは、ごまかせない。判断が私に残っていれば、比例する。判断が製品に乗れば、寝てくる。だから、定期的に、この一本の線を引き直す。
時間を、売上に比例させない
容量設計、と私は呼んでいる。
普通、容量というと、機械が何件さばけるか、という話になる。私にとっての容量は、そこではない。一人の人間が、増える件数に対して、どれだけ時間を取られずに済むか。代表者の時間を、売上の従属変数にしない。これを、設計の目標そのものに据えた。
件数ではなく、例外率を見る
そのために見る数字を、件数から、例外率に変えた。
件数が増えること自体は、いい。問題は、そのうち何割が、人の手を必要とするかだ。百件のうち一件しか人が出ないなら、千件来ても回る。例外率が下がっていれば、件数は怖くない。だから、件数の伸びより、例外率の下がり方を、経営の数字として追う。
目標は、低く見積もる
容量の見積もりは、わざと厳しめに置いた。
うまくいったときの数字で計画すると、余裕がなくなる。だから、例外の割合は高めに、一件あたりの時間は長めに見積もって、それでも回るかを確かめる。実際がそれより良ければ、余白が増えるだけだ。楽観で組んだ容量は、何かあったとき、すぐ溢れる。悲観で組んでおけば、慌てずに済む。
超えたら、採用ではなく、製品を直す
もし、自分の時間が、決めた上限を超えたら。
そのとき、人を雇う、とはしなかった。代わりに、その月にいちばん多かった例外の原因を、上から三つ取り出して、製品を直す。受付の条件、テンプレート、入力の検査、ヘルプ。手が足りないのは、人手の問題ではなく、製品の問題だと考える。増員で解くと、また比例に戻ってしまう。製品で解けば、次から減る。
そして、容量には、わざと余白を残す。第2部でも書いたことだ。上限ぎりぎりまで受けてしまうと、例外が起きたとき、出る手がなくなる。無人で回す設計は、いざというとき人が出られる余白があって、初めて安全に成り立つ。受けられるだけ受けない。これも、容量設計の一部だった。
次の回は、その容量の上で、一件のお客様から何度も収益を得る、マネタイズの組み方について書く。