無料相談をやめると決めたのは、第2部で書いたとおりだ。ただ、決めることと、入口から外しきることの間には、まだ距離があった。
方針として面談を主線から外しても、では、人が出る場面をどこに、どう残すのか。それを具体的に作り込まないと、結局あちこちにボタンが残って、なし崩しに元へ戻る。今回は、その線引きを実装した話だ。
標準の案件には、審査の入口を出さない
まず、標準的な案件には、面談や審査の入口を一切表示しないことにした。
診断から、有料の成果物、そして契約まで、人に会わずに進める道を主線に置く。標準のテンプレートで足りる相手なら、申し込みも設定も、自分で進められる。ここに面談ボタンがあると、人はつい押す。だから、出さない。
審査に回すのは、例外だけ
そのうえで、人の審査に回す案件を、はっきり決めた。
複数の業務にまたがる大きな契約。独自の連携が必要なもの。機微なデータを扱うもの。契約の条項を変えたいという要望。一定額を超える高額な案件。こうした、標準から外れるものだけに、審査の申し込みを表示する。それ以外には出さない。例外を定義することで、主線がぶれなくなった。
審査の前に、AIが論点を整える
人が出る場面を減らすだけでなく、出たときの時間も短くしたかった。
そこで、審査に回ってきた案件は、まずAIに整理させる。何が論点か。何が決まれば判断できるか。まだ確認できていないことは何か。採算は取れそうか。これを先にまとめておく。私がやるのは、その整理を見て、受けるか受けないかを決めることだけだ。資料を一から読み解く時間を、判断の時間に置き換えた。
面談は、消したのではなく、有料に変えた
人が出る場面を、ただ減らしただけではない。残した面談の、置き場所を変えた。
無料の入口にあった面談を、任意で有料のものに作り替えた。設計書を前提に、意思決定だけを扱う相談。高額や高リスクの案件を審査する場。専門家が会議をせず、設計書に非同期でコメントを返すレビュー。どれも、会うこと自体を商品にした。無料でいくらでも会える状態をやめ、会う時間に値段をつける。
そうすると、会いに来る相手が変わる。値段をつけることで、本気で前に進めたい人だけが残る。安売りしていた自分の時間を、ようやく値づけし直せた。
相談したい人を、放り出さない
面談を外しても、相談したい人を突き放さないようにする。前にもそう書いた。今回はそれを、仕組みに落とした。
無料の相談を求める人には、よくある質問、これまでの事例、診断のやり直し、録画のウェビナーを自動で案内する。多くの人が知りたいことは、だいたい重なっている。それを先に置いておけば、情報で足りる人は情報で進む。どうしても込み入った相談が要る人だけが、任意で有料の場に来る。会う相手が、本当に会うべき相手に寄っていく。
こうして、入口から人が消えた。診断も、購入も、契約も、人に会わずに進む。人が出るのは、定義した例外だけ。第3部で描きたかった「無人ファネル」が、ようやく形になった。
ただ、ここまで来て、当然の疑問が残る。人が見ないのに、その判定や成果物を、なぜ信用できるのか。次の第4部は、その「技術の堀」の話だ。自動でも信用に足る、その裏側を書いていく。