技術の堀、と大げさに書いてきた。けれど正直に言えば、その堀の多くは、新しく掘ったものではない。
すでに自分が持っていたものの上に、建てただけだ。第4部を締めるにあたって、その種明かしをしておきたい。一人でこれだけのものを作れたのは、ゼロから作らなかったからだ。
ゼロから作ろうとして、気づいた
無人で診断し、成果物を作る仕組みを構想したとき、最初はすべてを新しく作るつもりでいた。
相手の答えに応じて質問を変える仕組み。音声で答えを受け取る仕組み。AIで文章を生成する仕組み。管理者が結果を確認する仕組み。書き出してみて、気づいた。これは、前に作ったものに、ほとんどある。
機能の一覧に線を引いていったとき、半分以上に見覚えがあった。これは作った。これも作った。新規開発のつもりで始めた作業が、いつのまにか、自分の資産の棚卸しになっていた。
AIInterviewが、土台だった
以前に作った、AIInterviewという仕組みがあった。
相手の答えに応じて次の質問を変える。音声で受け取る。AIが内容を生成する。管理者が確認する。診断の入口で要るものが、ほぼそろっていた。新しい事業のために一から作るのではなく、この土台の上に、判定や課金や契約を足していく。そう考えを変えた途端、作るべきものが、ぐっと減った。
GASも、LINEも、使っているAIのモデルも、これまで使い込んできた道具だ。慣れた道具の上で組むから、速いし、壊れにくい。堀の正体は、新発明ではなく、積み重ねの再利用だった。
作るかどうかを、再利用率で決める
そこから、一つの基準ができた。
新しい機能を考えるとき、まず「これは、今あるものをどれだけ使い回せるか」を見る。再利用できる部分が多く、リスクが低く、採算が合うなら、作る。ゼロから作らないと無理なものは、後回しにするか、受けない。作る・作らないを、再利用率で決める。
借り物では、堀にならない
ただし、再利用といっても、よそから借りてきたものを寄せ集めるのとは違う。
土台にしたのは、自分で作って、自分で運用してきたものだけだ。中身を隅々まで分かっているから、壊れたときにすぐ直せる。仕組みを知らないものの上に積み上げると、何かあったとき、自分で立て直せない。一人でやる以上、それは堀ではなく、弱点になる。分かっているものの上にだけ建てる。これも、再利用の条件だった。
最初の商品も、土台に乗るものから
だから、最初に出す月額の商品も、この土台に素直に乗るものから選んだ。
聞き取りから、報告書を作る。会議から、議事録と、決定事項と、やることリストを作る。どちらも、適応的な質問と、音声と、生成という、AIInterviewの強みが、そのまま生きる。新しい業務をいきなり全部やるのではなく、土台が効くところから、一つずつ広げる。
一人でやる以上、強さは、機能の数ではない。すでにあるものの上に、どれだけ素早く、壊れにくく積めるか。それに尽きる。技術の堀とは、私にとって、この積み重ねのことだった。
ただ、機能の堀が深くても、それが壊れたり、漏れたりすれば、一発で信用は消える。次の第5部は、その「守りの実装」の話だ。壊れない、漏れない、止められる。攻めの機能とは別の、地味で大事な作り込みを書いていく。