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開発記録 / AI_DX制作記 / Vol.43 AI_DX制作記 Vol.7 集客の作り直し

記事 04

「あの人が辞めたら、誰も分からない」——痛みを、一つに定める

支援機関の相談の場で、私は何度も、同じ言葉を聞いてきた。業種が違っても、規模が違っても、経営者の口から出てくるのは、だいたい同じだった。「あの人が辞めたら、あの仕事は、もう誰も分からない」。

2026-07-04 公開

支援機関の相談の場で、私は何度も、同じ言葉を聞いてきた。業種が違っても、規模が違っても、経営者の口から出てくるのは、だいたい同じだった。「あの人が辞めたら、あの仕事は、もう誰も分からない」。

入口に置く痛みの言葉を、これに定めた。

現場で、いちばん重かった痛み

いくつもの困りごとを聞いてきた中で、これがいちばん重かった。

ベテランが、もうすぐ辞める。その人の頭の中にしか、手順がない。長年の勘で、例外に対応してきた判断が、書き出されていない。若い人に引き継ごうにも、何をどう教えればいいのか、本人も言葉にできない。残された時間は、そう長くない。

システムが古い、という悩みは、理屈だ。だが、この悩みは、感情が乗っている。あの人が辞めた翌日、うちの会社は回るのか。その不安は、経営者を夜、眠れなくさせる。痛みの強さが、桁違いだった。ここを入口にすれば、相手は、自分の話として、必ず立ち止まる。

「属人化」とは、書かない

ただし、この痛みを、そのままの言葉で書いてはいけない、と決めた。

「属人化を解消しませんか」。私たちの業界では、当たり前に使う言葉だ。だが、現場の経営者は、こうは話さない。属人化という言葉を、自分の悩みとして使う人を、私は見たことがない。専門家の言葉で語りかけると、相手は、自分の話だと気づけない。

だから、症状で書く。「前任者が作ったExcelを、もう誰もいじれない」。「あの担当が休むと、その日はその仕事が止まる」。「手順が、その人の頭の中にしかない」。経営者が、自分の口で言っている言葉に、寄せる。同じ痛みでも、言葉が違えば、届き方がまるで変わる。

Excelが限界だとは、思っていない

ここで、もう一つ、気をつけたことがある。安易に「脱Excel」と言わない、と決めた。

私たちは、つい「Excel管理は限界です」と言いたくなる。だが、中小の経営者の多くは、Excelで困っていない。むしろ、使えている。無料で、慣れていて、自由がきく。限界を感じるのは、大勢で同じファイルを奪い合うような、もっと大きな会社の話だ。

「Excelは限界です」と言われた小さな会社の社長は、たいてい「別に、困っていないが」と身を引く。こちらの都合を、押しつけられた気がするからだ。だからExcelは、それ自体を痛みにしない。「前任者のExcelを、誰もいじれない」という、属人化の症状の一つとしてだけ、そっと触れる。困っているのは、Excelではなく、それを一人しか触れないことのほうだ。

答えは、辞めた人の仕事を、AIに引き継がせること

痛みを定めたら、答えは、自然につながった。

辞めていく人の手順と判断を、AIに覚えさせる。そうすれば、その人がいなくなっても、誰でもその仕事を回せる。属人化の解消は、実は、AIを使ういちばん分かりやすい理由だ。ここで初めて、前の回で後ろに回した「AI内製」という答えが、痛みの受け皿として、ぴたりとはまる。

しかも、この答えには、安いマニュアル作りにはない強みがある。手順書やマニュアルでは、決まった作業しか引き継げない。だが、ベテランの価値は、例外にどう対処するか、という判断のほうにある。その判断を、AIになら、過去のやり取りごと覚えさせられる。マニュアルでは引き継げないものを、引き継げる。ここが、差別化の芯になる。

ただ、私は一度、広告で手ひどく外している。痛みが強いことと、そこに買ってくれる需要があることは、別の話だ。今度は、思い込む前に、感覚ではなく数字で、確かめることにした。次は、その市場検証の話を書く。