このシリーズを書き終えて、DX経営ゲームの制作記を25本振り返った。設計の判断、失敗と修正、AIとの対話、本番障害、テスト自動化——全てのプロセスを記録した。最後に、次に作るものの話をしたい。
なぜAI経営シミュレーションか
「DXの次は何か」——答えはすでに目の前にある。生成AIだ。「DXを進めろ」という10年前のメッセージが、今は「生成AIを活用しろ」に変わっている。そして多くの経営者が同じ問いを持っている。「どこから始めればいいか分からない」「いくら投資すべきか分からない」「リスクが怖い」。
「AIに投資しない会社も、しすぎた会社も沈む」
AI経営シミュレーションのコアコンセプトはこのキャッチコピーに込めた。DX経営ゲームとの最大の違いは「リスクの種類」だ。AI経営では、AIハルシネーション炎上・個人情報漏洩・AI依存によるスキル崩壊という3種類の「死に方」が加わる。これらは全て、現実の企業で起きていることだ。
DX経営ゲームのエンジンが活きる
技術的には、DX経営ゲームのエンジンを大部分流用できる。ターン進行、意思決定システム、市場競争、診断レポート——これらはそのまま使える。DX投資の4軸をAI投資の4軸に置き換え、イベントの内容をAI時代の出来事に変える。2026年後半リリースを予定している。
このシリーズを書いた理由
最後に、このシリーズを書いた理由を記しておきたい。
DX経営ゲームを数週間で作れたことは、単なる技術の話ではない。「AIと人間が協働すれば、一人でも大きなものが作れる」という事実の記録だ。設計の判断は私がした。「これが研修として正しいか」という問いへの答えも私が出した。AIはその判断を支援し、実装を速めてくれた。
「何を作るか」は人間が考える。「どうやって速く作るか」はAIが助ける。
この協働の形は、これからの仕事の標準になると思っている。それを記録したのが、このシリーズだ。
AI経営シミュレーションの具体的な構想
「2026年後半リリース予定」と書いた。その具体的な構想を、現時点で固まっている範囲で記録しておく。
ゲームの基本設計:
プレイヤーは中小企業の経営者として、AI活用への投資意思決定をゲーム内で行う。DX経営ゲームと同様に製造業を舞台にするが、「AI投資の4軸」を新たに設計した。
- AI_OPS(業務自動化AI):受注処理・在庫管理・請求書処理の自動化。投資が進むと、オペレーションコストが低減し、ヒューマンエラーが減少する。
- AI_PROD(生産AI):品質管理・予知保全・生産最適化AI。投資が進むと、不良率が下がり、設備稼働率が改善する。
- AI_SALES(営業AI):需要予測・価格最適化・顧客分析AI。投資が進むと、販売予測精度が上がり、在庫ロスが減る。
- AI_GOV(AI統治):AIの監査・説明責任・倫理基準の整備。不足すると炎上リスクやコンプライアンス違反リスクが高まる。
DX経営ゲームと異なる「死に方」の設計:
AI経営シミュレーションには3種類の「特有の倒れ方」が加わる。
「AIハルシネーション炎上」——AI_SALESへの過剰投資で、AIが生成した顧客向けメールに誤情報が含まれ、SNSで拡散。ブランド価値が急落するイベント。AI_GOVへの投資が低い企業に確率で発動する。
「個人情報漏洩」——AI活用のデータ整備が進む過程でセキュリティ設定を怠ると、顧客データが流出。現金への多額の損害賠償と行政指導が発生する。AI_GOVへの投資が一定以上なら確率が低下する。
「AIスキル崩壊」——AI_OPSを急速に進めることで、既存の業務スキルを持つ従業員が「AIに任せればいい」という状態になる。AIシステムが障害を起こした際に、人間が対応できなくなる。
これらのイベントは全て現実に起きていることだ。「AIに投資しすぎても沈む」「投資しなくても沈む」——このジレンマがAI経営シミュレーションの核心だ。
DX経営ゲームを作って確信したこと
このシリーズを25回書いて、改めて確信していることがある。「AIと協働することで、1人の人間が作れるものの限界が変わった」という事実だ。
数年前なら、データベース設計からフロントエンドまで一人で数ヶ月かけて作るものが、数週間で動くようになった。速さだけの話ではない。「一人で全工程を把握しながら作る」という設計の一貫性が、AIとの協働によって維持できるようになった。分業の非効率なく、判断の速さで前に進める。
DX経営ゲームは「AIと1人の人間が協働したら何が作れるか」の実験だった。その答えが、dxgame.jpというプロダクトだ。
*シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦**DX経営ゲーム:https://dxgame.jp**AI経営シミュレーション(2026年後半リリース予定)*