公開の日取りを決めたとき、機能の一覧を眺めて、一つだけ線を引いて外した。出来上がっている、試験も通っている、けれど公開初日には動かさないと決めたものがあった。作った成果物をそのままSNSへ流す仕組みだった。
完成しているのに、出さない理由
外へ出す機能は、自分の側だけでは完結しない。相手の仕様が変わる。接続に使う鍵に期限がある。載せてよい内容の線引きは、相手の規約に従う。公開の直後は、想定していなかった使われ方が最初にぶつかってくる時期でもある。その時期に、自分の手が届かない相手と繋がった経路を一本増やすのは、割に合わないと思った。だから、機能ごと消すのではなく、作ったまま止めておく形を選んだ。落ち着いてから、あらためて開ければいい。
切るのは、いちばん上の一箇所にする
止め方は迷った。細かいスイッチが管理画面の中にいくつもあり、投稿元ごと、投稿先ごとに入り切りできる。それを全部切ることもできたが、切り忘れが一つでもあれば意味がない。それに、どれを切ってどれを入れたのか、後から誰も思い出せなくなる。だから、細かいスイッチは全部入れたまま触らず、そのさらに上に一つある大元の指定だけを切ることにした。下は全部生きているが、上で止まっている。復帰させるときも、その一箇所を戻すだけで済む。
止まっている、は見て分かりにくい
厄介だったのは、止まっていることの確かめ方だった。動いている機能は、動かせば分かる。動いていない機能は、画面のどこにも出てこないので、本当に止まっているのか、それとも見えていないだけなのかが判別できない。そこで、止まっている状態を一枚の記録として撮ることにした。大元の指定が切れていること、外向きの投稿の受け口を叩くと利用不可の応答が返ること、そもそも公開されている投稿が一件も無いこと、送信を待っている列が空であること。加えて、動いているプログラムのファイルの指紋、サービスが立ち上がった時刻、その時の処理番号も並べた。
この組み合わせには意味がある。大元が切れていることだけを示しても、切り忘れた別の経路が生きている可能性は否定できない。だから、出口の側からも見た。外向きの受け口が実際に断りを返すこと、待ち行列に一件も溜まっていないこと、公開状態のものが数えてゼロであること。入口を閉めた証拠と、出口から何も出ていない証拠の両方が揃って、ようやく止まっていると言える。片方だけでは、自分の思い込みを写しただけになる。
撮り直した回数だけ、直した回数だった
この記録は、一度撮って終わりにはならなかった。指摘を受けて直すたびにファイルの指紋が変わるので、そのつど撮り直した。二日間で四回になった。並べてみると、指紋だけが変わり、止まっている、という事実は変わっていない。この積み重ねが、公開直前のいちばんの安心材料になった。日付と時刻の入った状態の写しが手元にあれば、後から「あのとき、あれは動いていなかった」と自分で言い切れる。
作ったものを全部見せたい気持ちは、いつもある。一人で作っていると、機能の数がそのまま働いた量の証しに見えてくる。それを一つだけ抑えて棚に置くのが、公開前にやるべきことだった。棚に置いた機能は消えない。開ける日を、こちらの都合で選べるようになっただけだ。
次は、公開してからも外から見えてはいけない管理画面を、どう隠したかを書く。