注文の取り込みと並んで、もう一つ頼まれたのが、出庫の記録だった。倉庫から品を出すとき、何を、いくつ出したかを残したい。これまでは、伝票を見ながら手で書き写していた。
出す品には、ラベルが貼ってある。品名、産地、天然か養殖か、規格、管理番号。人はそれを見て記録する。だったら、その作業も、ラベルを撮るだけで済ませられないか。そこから始めた。
ラベルを、撮って読ませる
最初は、出庫する箱のラベルを一枚ずつ撮り、AIに読ませる形にした。
写真から、品名や産地や規格を読み取り、記録の欄に割り付ける。実物のラベルを何度か試すうちに、読み取りの精度が上がっていった。ラベルの書き方には、その業界なりの型がある。縦書き、独特の並び、略記。その型をAIに教えると、項目ごとにきれいに分解して拾えるようになった。
ここでも、汎用の読み取り能力だけでは足りず、そのラベルの形を教えることが効いた。現場の紙には、現場の作法がある。
数えるのは、人に残した
一つ、割り切ったことがある。箱の数を、機械には数えさせない。
同じ品は、同じラベルの箱が何箱も積まれる。写真や映像から、それが何箱あるかを機械で正確に数えるのは、難しい。重なった箱、隠れた箱、別の山の箱。区別しきれない。無理に数えさせれば、かえって間違える。
だから、AIには「何の品か」を、重複なく挙げさせる。箱の数は、人が入力する。読み取りは機械、数えるのは人。ここでも、機械が得意なことと、人が確実なことを、分けた。数を機械に任せて事故を起こすより、この分担のほうが、現場は安心して使えた。
動画で、流し撮りする
出庫は、日によって数箱のときもあれば、数十箱のときもある。一枚ずつ撮るのは、多い日には現実的でない。
そこで、まとめて撮る形を足した。写真を何枚も一度に上げられるようにし、さらに、動画で棚や箱を流し撮りする方式も入れた。撮った映像から何コマかを抜き出し、そこに写っている品を、重複を除いて一覧にする。同じ品が何度も映っても、一つにまとめる。あとは、担当が箱の数を入れるだけ。
数十箱を一枚ずつ撮る手間が、ひと流しの撮影に変わった。撮り方を、現場の量に合わせた。
現場のやり方に、道具を寄せる
写真から始めて、動画にたどり着くまでに、教わったことがある。道具のほうを、現場のやり方に寄せる。逆をやってはいけない。
一枚ずつ撮ってください、と現場にお願いするのは、道具の都合を人に押しつけることだ。現場は、まとめて素早く出したい。ならば、まとめて撮れる道具にする。流し撮りで済むなら、そうする。人の動きを変えさせるのではなく、人の動きに、道具が付いていく。
注文も、出庫も、根っこは同じだった。電話の使い方を変えないこと。撮り方を現場に合わせること。現場の自動化は、賢い仕組みを作ることより、その仕組みを、現場の手つきになじませることのほうが、ずっと難しく、ずっと大事だった。