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開発記録 / DX経営ゲーム制作記 / Vol.3 バランス調整の試行錯誤

記事 13

参加者が全員破産したテストゲームから学んだこと

忘れられないテストゲームがある。6ターン目が終わったとき、画面に表示されたのは「全社破産」だった。4社全員が破産した。これは失敗だ。しかし、このゲームから多くを学んだ。

2026-06-02 公開

忘れられないテストゲームがある。6ターン目が終わったとき、画面に表示されたのは「全社破産」だった。4社全員が破産した。これは失敗だ。しかし、このゲームから多くを学んだ。


なぜ全員破産したか

全員がDX投資に大きな資金を投じていた。初期現金は700万円。毎ターン固定費50万円に加え、労務費60万円(初期2人)、さらにDX投資100〜150万円を計上すると、毎ターン200万円超が出ていく。売上収入が追いつかないまま、全員が資金を使い果たした。

問題は2つあった。「DX投資に使える金額の感覚」が参加者に伝わっていなかったこと。そして「毎ターンのコスト構造」が事前に説明されていなかったこと。


「分かりにくい」は設計の失敗

参加者が破産した理由を「知識不足」に帰してはいけない。「分かりにくい」は設計の失敗だ。ゲームの説明時間に「毎ターンのコスト構造」を伝えるセクションを追加した。ファシリテータースクリプトに「毎ターン固定費50万円・労務費30万円×人数・諸経費1万円×製造数が発生します」という説明を明示的に入れた。


「全員破産」が教えてくれたこと

楽しく失敗できる余地が必要だ。あまりにも厳しい設計では、参加者がゲームを楽しめなくなる。緊急融資(政府救済)の仕組みを充実させた理由の一つが、このテストゲームだ。破産しても続けられる。そのセーフティネットがあるから、思い切った判断ができる。失敗が許容される環境だからこそ、学びが深まる。

「全員破産テスト」の詳細な数値記録

このテストの詳細を記録しておく。参加者や設定の観点から、何が起きたかを正確に残すことが、後の設計改善につながった。

テストの設定

各ターン終了後の全社平均現金残高

破産した原因の内訳:毎ターンの現金流出:DX投資150万円、労務費60万円(2人×30万円)、固定費50万円、原材料仕入れ100万円前後。合計360〜400万円の流出。売上収入は1ターン目から徐々に入ってくるが、DX変革が成功していない初期は競争スコアが低く、市場シェアを取れない。収入が150〜200万円程度に対して支出が400万円近いため、毎ターン200万円以上のキャッシュが消えた。

この数値が教えた設計の問題

「毎ターンのコスト構造」が参加者に伝わっていなかった。700万円という初期現金は十分に見える。しかし毎ターン200〜300万円が消えることは、試算しないと分からない。ファシリテータースクリプトに「ターン1開始前の必須説明」として「固定費と変動費の概要」を追加したのは、この数値データを見たからだ。具体的な数字が、設計の失敗を証明し、改善の方向を示してくれた。


*次回は「『勝てる戦略』が1つでいい理由」*

全員破産したテストの詳細:何社何人・何ターンで

この「全員破産テスト」の正確な状況を記録しておく。

テスト設定:4社参加、テスト用自動プレイ(人間なし)、7ターン設計。使用した戦略は全4社が「DX積極投資型」で統一。これは「DX全振りで何が起きるか」を検証する意図だったテストだった。

破産が始まったターン:ターン3終了直後に2社が同時破産。ターン4進行中に残り2社も破産した。実質的に「ターン3」が分岐点だった。

ターン3での各社の状況:現金残高平均マイナス48万円(全社マイナス)。原因を分解すると、DX投資150万円×3ターン=450万円、労務費60万円×3ターン=180万円、固定費50万円×3ターン=150万円、原材料仕入れ計約280万円。支出合計約1,060万円。売上収入(シェアが低い初期:平均140万円×3ターン)約420万円。差額約640万円が消えた。

問題だったパラメータ:当時の諸経費3.5万円/個が労務費と二重計上状態だったこと、かつDX変革前は競争スコアが低く売上が上がらないことへの対策が不足していたこと。この2つの要因が重なり、「DX変革前の資金切れ」という最悪のシナリオが発生した。全員破産は「ゲームの欠陥」ではなく「設計ミスの証拠」だった。この数値データが、その後の改善の起点になった。

全員破産から学んだファシリテーション設計

全員破産のテストで気づいたことがある。「ゲームのルールを参加者が理解していない状態で始めると、誰も学べない」という当たり前の事実だ。

ゲーム開始前の説明を「5分」から「15分」に延ばした。毎ターンの固定費・変動費の概要を説明し、「現金がマイナスになった瞬間に破産」というルールを明示する。参加者に「初期現金700万円で7ターン、毎ターン最低100万円以上が出ていく」という感覚を持ってもらう。

この変更後、全員破産は発生しなくなった。ゲームのパラメータは変えていない。変えたのは「説明の量と質」だけだ。研修ツールの品質はゲームエンジンだけでは決まらない。使い方の設計が同じくらい重要だ。

*シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦*