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開発記録 / AI_DX制作記 / Vol.43 AI_DX制作記 Vol.7 集客の作り直し

記事 02

同じ悩みを、違う入口から売る会社——痛みで入り、答えを後から出す

広告を止めたあと、私は自分と同じ領域の会社の広告を、片っ端から開いていった。相手がどう売っているのかを、見ておきたかった。その中に、手が止まる一枚があった。

2026-07-04 公開

広告を止めたあと、私は自分と同じ領域の会社の広告を、片っ端から開いていった。相手がどう売っているのかを、見ておきたかった。その中に、手が止まる一枚があった。

その会社は、「AI」を売っていなかった

開いてすぐ、私は自分との違いに気づいた。

その会社が見出しに大きく掲げていたのは、AIではなかった。「老朽化した基幹システムの、作り直し」だった。十年以上使い続けたシステム。会社の実態と、合わなくなった仕組み。それを立て直す、という話だ。AIは、そのページの奥のほうに、ようやく出てきた。しかも、システムを速く安く作るための道具として、脇に置かれていた。

私は、AIを、いちばん前に、いちばん大きく置いていた。この会社は、AIを後ろに下げて、悩みを前に出していた。同じ道具を扱っているのに、置き場所が、正反対だった。

入口は、痛みだった

見出しから順に読んでいくと、その作りが、はっきりしてきた。

最初に置かれていたのは、技術の言葉ではなく、痛みの言葉だった。長く使ったシステムが、業務と噛み合わなくなっている。特定の担当者に、仕事が依存している。勘と経験だけで、経営が回っている。どれも、読んだ経営者が「これは、うちの話だ」と感じる一文だった。

解決策の説明は、そのあとだ。まず痛みで、相手の首を縦に振らせる。自分ごとだと思わせてから、初めて「その原因は、業務に仕組みが組み込まれていないことです」と、解き方を差し出す。順番が、私と逆だった。私は、解き方の名前から入っていた。

補助金と、初期費用ゼロ

もう一つ、その会社がやっていたことがある。買い物の、重さを外す工夫だ。

システムの作り直しは、高い買い物だ。だから、二つの錠を外していた。一つは、補助金。使える制度を並べて、実際の負担が下がることを見せる。もう一つは、初期費用ゼロ。まず月々の支払いから始められる形にして、最初の一歩を、軽くしていた。

高い、という壁を、正面から「安くします」と言うのではなく、「使える制度があります」「最初はゼロで始められます」と、迂回して越えさせる。重い決断の、入口だけを軽くする。うまいやり方だと思った。

真似できるところと、できないところ

ただ、感心して終わりにするわけにはいかなかった。何を学び、何を学ばないかを、分けて考えた。

学べるのは、入口の作り方だ。痛みで入り、答えを後から出す。この順番は、私の診断にも、そのまま効く。学べないのは、その会社の中身のほうだった。そこは、大きな受託開発の体制を持つ会社だった。何百社ぶんもの開発実績と、それを支える人手がある。私は、一人だ。同じ土俵で「システムの作り直しを請け負います」と名乗れば、案件を受けきれないし、価格でも、納期でも、勝てない。

だから、真似するのは、入口の設計だけにする。届け方の順番は学び、事業の中身は、一人でも回る自分の形を守る。この線引きが、はっきりした。

そして、この一枚を見て、もう一つ、認めざるを得ないことがあった。私は、商品の名前を、入口に使いすぎていた。次は、その言葉を、主役から降ろした話を書く。