旗艦シリーズを一区切りにしたあと、私は電卓ではなく、広告の管理画面を見つめていた。表示回数は、九百ほど。クリックは、三十数回。そして、申し込みは、ゼロだった。
無人で回る診断を作り、守りを固め、決済も通した。あとは、人を連れてくるだけだ。そう思って、検索広告を出した。結果は、この数字だった。
出したのは、業務の言葉で組んだ検索広告
広告のかたちは、素直に考えた。
全国に配信する。入札は、なるべく多くクリックしてもらう設定にした。目標は、いきなり購入ではなく、無料診断のメール登録に置いた。そして、検索キーワードは、私が相手にしたい業務の言葉で組んだ。受注処理、帳票の入力、議事録、問い合わせ対応。減らせるはずの、あの手作業たちだ。
理屈は通っていると思っていた。困っている業務の言葉で広告を出せば、困っている人が来る。来た人に、まず無料で診断を見せる。悪くない設計に見えた。
クリックは付く。でも、その先で、何も起きない
数日回して、管理画面を開いた。クリックは、少ないながら付いていた。ここまでは、想定の範囲だった。
問題は、その先だった。計測の画面をたどると、広告から来た人の、ページに留まった時間の平均が、七秒だった。診断を始めた記録も、メールを登録した記録も、ゼロのまま動かない。つまり、来た人は、ページを開いて、ほとんど何も見ずに、閉じていた。
七秒。それは、間違えて開いてしまったページを、閉じるまでの時間だ。私が数か月かけて作った診断の入口は、その七秒の中で、一度も触れられていなかった。
お金の大半は、探し物の違う人に消えていた
どのキーワードに、いくら使ったのかを見た。ここで、ようやく正体が見えた。
いちばんお金を使っていたのは、「資料作成のAI 無料」といった種類の言葉だった。無料で使えるツールを、今すぐ探している人。自分の手で試してみたい人。その人たちが、私の広告を踏んでいた。
彼らは、コンサルティングや、伴走や、実行の判断を、買いに来たのではない。無料の道具を探しに来ていた。だから、私のページを開いて、無料のツール一覧ではないと分かった瞬間に、七秒で閉じる。当然だった。お金は、いちばん買わない人たちに、いちばん使われていた。
買う人は、検索窓の中にいなかった
ここで、私はようやく、いちばん大事なことに気づいた。
AIで自社の仕組みを作り直したい。人が辞めても回るようにしたい。そう思っている経営者は、検索窓に、その言葉を打っていない。忙しいし、そもそも自分の困りごとを「検索できる言葉」に翻訳していない。一方で、検索窓に言葉を打ち込んでいる人の多くは、無料の道具を探している人で、相談や伴走を買う人ではなかった。
売り物と、届け先の、深いところでの不一致。良い商品を作れば売れる、という思い込みが、ここで崩れた。買う気のある人がいる場所と、私が広告を立てた場所が、そもそも違っていた。
だから、一度、広告を止めた。数字の悪い広告を、いじって直す段階ではない。入口の作り方そのものを、根っこから見直す必要があった。次は、同じ悩みを、まるで違う入口から売っている、ある会社の広告を見た話を書く。手が止まる一枚だった。