この再設計で、自分でも意外だった決断がある。無料相談をやめたことだ。
診断士という仕事柄、「まずはご相談ください」は当たり前の入口だった。相談に乗ること自体が価値だと、ずっと思ってきた。話を聞いて、整理して、最初の一歩を一緒に考える。それが自分の仕事だと信じてきた。
その看板を、主線から外す。書いていても、まだ少し落ち着かない。
無料相談は、穴そのものだった
なぜやめたのか。理由ははっきりしている。無料相談は、私の時間が比例して増える穴そのものだったからだ。
一件ごとに私が出ていく。三十分か、一時間か。しかも、相談に来た人が必ず契約するわけではない。来てくれること自体はありがたい。でも、主線にこれを置いたままでは、何を自動化しても意味がなかった。入口で私が全件に出ているのだから、その先をいくら無人化しても、上限は入口で決まってしまう。
判断を製品に移し、レビューを例外にして、ようやく手が空きかけたところだった。その手を、無料相談がまた埋めていた。ここを塞がないと、再設計は完成しないと分かった。
主線から「面談ボタン」を消した
やったことは、見た目には小さい。標準的な案件の導線から、面談予約のボタンを外した。
代わりに、自分で契約して始められる道を主線に置いた。診断で方向性をつかみ、必要なら有料の設計書を手に入れ、そのまま自分で始められる。人に会わなくても、購入から利用開始まで進む。ボタンを一つ消すだけのことだが、これは「人が出ない入口」を主線に据える、という方針の表明だった。
面談は、消したのではなく、置き場所を変えた。無料の入口ではなく、高額で、リスクが高く、確度も高い案件だけを審査するための、任意で有料の場に位置づけ直した。会う相手を、絞った。
相談したい人を、突き放さない
ここで気をつけたことがある。無料相談をやめるのは、相談したい人を突き放すことではない。
人が出ていかなくても、答えにたどり着ける道を別に用意した。よくある質問。これまでの事例。診断のやり直し。録画のウェビナー。多くの人が知りたいことは、だいたい同じだ。それを、私が毎回口で答えるのではなく、先に置いておく。
そうすると不思議なもので、面談が要る人と、要らない人が、自然と分かれていく。情報で足りる人は情報で進み、本当に込み入った相談が要る人だけが、有料の面談に来る。私が出ていく相手が、必要な人に寄っていく。
寂しさは、残った
正直に書くと、この決断には寂しさが残った。
「まずはご相談ください」は、長く自分の入口だった。その一言で来てくれた人と、たくさんの仕事をしてきた。それを主線から外すのは、自分の一部を畳むような感覚があった。効率の話としては正しい。頭では分かっている。それでも、割り切れなさは少し残った。
ただ、こうも思う。無料相談に出ずっぱりで倒れてしまえば、結局だれの相談にも乗れない。一人で長く続けるためには、自分が出ていく場面を選ばないといけない。相談に乗りたいからこそ、無料相談を主線から外す。矛盾しているようで、これが一人で回すということなのだと、今は思っている。
入口が変わると、事業が変わる
無料相談を外したことで、事業の形そのものが変わった。
入口で人が出ないなら、その先も人が出ない設計でそろえないと、つじつまが合わない。診断、購入、利用開始、改善。全部を「人が出なくても進む」前提で並べ直す必要が出てきた。一つのボタンを消したことが、全体の設計を引っぱっていった。
次の回で、この第2部を締める。「売れるか」ではなく「無人で安全に回せるか」を、設計の真ん中に置く、という話だ。