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開発記録 / DX経営ゲーム制作記 / Vol.57 作り直しと、本番の記録

記事 03

賭けではなく、挑戦と呼ぶ——変革の見返りを作り直す

自分で作ったゲームを、自分で一人で通しで遊んでみた。何度か回して気づいたことがある。変革にはまったく手を出さず、効率化だけを積んだ企業が勝ってしまう。しかも、そこそこ勝つのではなく、圧勝する…

2026-09-16 公開

自分で作ったゲームを、自分で一人で通しで遊んでみた。何度か回して気づいたことがある。変革にはまったく手を出さず、効率化だけを積んだ企業が勝ってしまう。しかも、そこそこ勝つのではなく、圧勝する。変革を主題に掲げたゲームで、変革を選ばないのが最適解になっていた。

原因を追うと、二つの別々の間違いが重なっていた。一つは変革の成功確率の式、もう一つは成功したときの見返りの設計だった。

変革しなくても勝ててしまった

見返りのほうから書く。当時の設計では、変革に成功した企業は競争力そのものが上がる仕組みになっていた。成功しなくても、変革に向けた投資をしている最中から、競争力にじわじわ効く。つまり変革は「挑む価値のある賭け」ではなく「やっておけば得な追加の効率化」になっていた。これでは、変革に挑んだ企業が独走するだけで、挑まなかった企業との対比が生まれない。

そこで思い切って、変革への投資が既存事業に効く経路を全部外した。変革への投資はコストしか生まない。唯一の見返りは、変革そのものが成功することだけ。挑むかどうかは、はっきり経営判断になる。効率化を積んで着実にいくか、当たるか分からないものに金を回すか。二者択一を、数字の上でも本当の二者択一にした。

掛け算をやめて、通過条件にする

確率の式のほうは、もっと素朴な失敗だった。変革の成功確率を、六つの要素の掛け算で出していた。データの整備度、自動化、販売、人材、AI、意思決定。それぞれが一に満たない値なので、六つ掛けると値が潰れる。実際に回すと、誰も変革に届かない。要素を全部揃えた企業でさえ届かない。稀にしたかったのではなく、単に届かない式を書いていた。

作り直した形は、通過条件と、少数の連続した因子の組み合わせだ。まず、全部満たさないと挑戦の土俵に上がれない条件を並べる。データの土台、自動化と販売の合計、人材の充足、当期が黒字であること、破綻していないこと。ここは満たすか満たさないかの二値でいい。土俵に上がったうえで、確率の本体は変革への投資の厚みで決まり、AIと人材がそこに倍率として乗る。倍率はおよそ二倍から三倍。AIは強く効くが、AIだけでは土俵にも上がれない。

見返りを、倍率から新しい市場へ

成功したときに何を渡すかも変えた。以前は得点に倍率を掛けていたのだが、これには天井があった。市場の取り合いをしている以上、シェアは百パーセントで頭打ちになる。すでに強い企業が変革に成功しても、掛ける先がもう残っていない。

だから見返りを、既存市場の取り分ではなく、新しい市場そのものにした。変革に成功した企業には、需要が上乗せされる。誰かから奪うのではなく、パイが広がる。これは変革という言葉の意味にも合っていた。既存の商売を上手くやることと、新しい商売が生まれることは、別のことだからだ。

面白い副作用も出た。需要が増えても、供給できなければ売上にはならない。変革に成功した企業は、そのあと生産を広げないと、増えた需要を取りこぼす。しかも終盤で成功しても、広げる時間が残っていない。早く挑んで早く当てて、そこから増産する。この筋書きが一番強くなった。いつ挑むかが戦略になったわけで、これは狙って作ったものではなく、設計を正した結果として出てきた。

「賭け」という言葉を捨てる

確率は低く据え置いた。全力で振っても一回のゲームで十数パーセント、八社で回して零社か一社。現実で本当の変革に届く企業の割合を考えれば、これでも高いくらいだ。稀である理由は、天井が低いからではなく、必要なものを全部揃えるのが難しいからにした。運ではなく腕で差が出る形にしたかった。

最後に言葉を統一した。開発中は賭けとかギャンブルとか呼んでいたのだが、投資項目の名前も、進行役の説明も、競合企業の型の呼び名も、説明書も、案内ページも、全部「挑戦」に揃えた。経営者に向けた研修で、経営判断を賭けと呼ぶのは違う。言葉の選び方は仕様の一部だと思っている。