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開発記録 / DX経営ゲーム制作記 / Vol.57 作り直しと、本番の記録

記事 02

AIを、称号ではなく経営資源にする——増幅する側に置く

最初に書いた案を、私は全部捨てた。AIを使いこなした企業に称号を与える案。毎ターンAIの活用度を判定して有利不利を出す案。どれも会議では受けがよかったのに、実装しようとすると必ず同じ壁に当た…

2026-09-16 公開

最初に書いた案を、私は全部捨てた。AIを使いこなした企業に称号を与える案。毎ターンAIの活用度を判定して有利不利を出す案。どれも会議では受けがよかったのに、実装しようとすると必ず同じ壁に当たった。「その称号は、経営者にとって何を決める材料になるのか」に答えられない。

経営ゲームで扱う以上、AIは飾りではいけない。プレイヤーが自分の意思で金額を決め、その決定が数字に返ってくるものでなければ、経営の練習にならない。そう考え直して、AIの置き場所を根本から変えた。

称号にしようとして、やめた

確定した形はごく単純だ。AIを、人材や設備や資金と同じ列に並ぶ投資項目として一本立てる。特別枠ではない。称号でもない。プレイヤーは毎期、いくらAIに投じるかを他の投資と並べて決める。投じた分だけAIの活用度が上がる。

そのうえで、AIは単独では何も生まない設計にした。AIができるのは、すでにある取り組みの効果を高めることだけだ。役割で言えば三つに分かれる。基盤への投資が土台を作る。AIへの投資がその土台の効果を高める。人材への投資が、土台とAIを使いこなす力を作る。この三つが揃って初めて数字が動く。

土台を作る、効果を高める、使いこなす

AIの効き方は、到達している段階によって内容が変わる。データの整備が済んでいる段階なら、在庫や仕入れの管理が増幅される。生産の自動化まで進んでいれば、生産性と加工費と不良率と生産能力に効く。販売の仕組みができていれば、販売力と販路と需要への対応が伸びる。

そして最も先の、変革に挑む段階では、効く対象が変わる。ここでのAIは業務の数字を直接押し上げるのではなく、変革をやりきる実行力そのものを高める。仕組みを自前で早く作れる、業務の組み替えを速く試せる、判断のための分析が速い。効果は強い。ただし、AIを積んだからといって自動的に変革が成るわけではない。この区別は何度も言葉にして書き残した。土台の段階では業務成果を増幅し、変革の段階では実行力を高める。

ゼロなら、前とまったく同じ数字になる

実装で自分に課した条件が一つある。AIの活用度がゼロのとき、計算結果が以前とまったく同じになること。増幅は既存の係数に倍率を掛ける形にして、活用度ゼロなら倍率が一になるようにした。これなら、これまで何度も調整してきたバランスが、AIを足したせいで崩れることはない。

この形にはもう一つ効き目があった。土台が無い層には、AIも効かない。倍率が掛かる相手そのものが無いからだ。「データも整えていないのにAIだけ買った企業は伸びない」という当たり前を、追加の判定を書かずに済ませられた。歯止めを別に作るのではなく、式の形から自然に出てくるようにする。こういう作りは後で壊れにくい。

人が足りなければ、AIは空回りする

もう一つの歯止めが人材だ。増幅の倍率の中に、人材の充足度を掛けている。人が足りなければ倍率は伸びず、AIに投じた金は空回りする。ここで一度、設計を間違えかけた。人材の充足度を、土台の効果そのものにも掛ける案を書いていたのだ。それだと、人材ゼロの企業は基盤の投資まで無価値になり、活用度ゼロで以前と一致するという条件も崩れる。人材が効くのはAIの増幅の中だけ、と場所を限定して直した。

最後に、順番を飛ばした場合の罰も入れた。活用度から土台と人材を引いた値が大きいほど、コストが膨らみ、現場が混乱し、信用が落ちる。整えないまま道具だけ増やすと燃える、というのは実際の現場で何度も見てきた。ゲームの中でも同じように燃えてもらう。次は、その先にある変革の段階を、どう設計し直したかを書く。