代表事例 / 製造・卸 / FAX で届く注文書
毎朝 4 社から、まったく違う書式の注文書が FAX で届きます。 担当の方はそれを読み解いて、1 行ずつ手で入力していました。 その作業を「AI が読んで、人が確かめる」形に置き換えた記録です。
作った過程は 開発記録 に 7 本公開しています。 社名・地域・数量など、事業者が特定できる情報は伏せています。
01 困っていた仕事
ある青果食品卸では、毎朝 FAX が届く。4 社の取引先から、それぞれまったく違う書式で。 担当者は 4 種類の帳票を読み解いて、1 行ずつ手でシステムに入力する。これを毎日やっている。 開発記録 35-1「FAX注文書4社4フォーマット——AI読取で手作業転記をなくす」より
月間カレンダー形式。縦が日付、横が商品。 1 枚に 1 か月分。セルに「8*30」のような式が書かれていることもある。
着日と納品日を手書きで指定するグリッド形式。 文字の癖・インクの濃淡・紙の傾きが毎回違う。
3 店舗分が 1 枚に混在。 印刷と手書きが入り交じっている。
JAN コード付きの印刷フォーム。 数量欄に丸印を押す方式。人には直感的だが、機械には難しい。
「AI で読み取れないですか」と相談を受けたとき、 「できます」ではなく「やってみます」と答えました。実際に試してみないと分からなかったからです。
02 実際に作った仕組み
4 種類の帳票で 100% を目指すこと自体、現実的ではありません。 大切なのは「全て正確に読める」ことではなく「手作業で打ち込むより楽になる」ことだと、 設計を始めた段階で決めました。
担当の方がブラウザから FAX の画像(JPG・PNG・PDF)を送ります。 新しい機械は入れていません。既存のサーバーに相乗りさせています。
文字を読むだけでなく、 「縦が日付で横が商品だ」という表の構造ごと読み取ります。 セルの計算式は計算した結果で返ってきます。
行ごとに「どれくらい確からしいか」が付いて出ます。 ここから先が、この仕組みのいちばん大事なところです。
03 人が確認する部分
正しく読めているか見る作業は、目で追って進められます。 間違いを直す作業は、元の帳票を見ながら集中する必要があります。 毎日使う方にとって、操作の大半は前者です。 ここを混ぜると、全件を 1 行ずつ確認することになり、疲れてしまいます。
| 色で伝える | 行ごとの確からしさを、緑・橙・赤で表示します。 緑が並んでいるところは目で流し、橙や赤が見えたら止まって確認する。 色が「ここを見て」という合図になります。 |
|---|---|
| 要確認だけに絞る | ボタン一つで、確からしさが中・低の行だけを表示します。 精度の高い帳票では絞り込む必要がありません。 低い帳票では、直すべき行にすぐ到達できます。 |
| 確かな行はまとめて | 緑の行をまとめて確認済みにして、残った橙・赤だけを手で見ます。 この 2 段階が、確認作業の骨格です。 |
| 元の帳票を見ながら直す | 別画面を開かず、一覧の中で直せるようにしました。 別画面が開くと一覧が隠れ、元の帳票と見比べられなくなるからです。 |
| 見落としを止める | 未確認の行が残ったまま確定しようとすると、件数を出して止めます。 確かめていないデータが業務に流れ込まないための安全弁です。 |
担当者が安心して使える確認 UI があれば、AI の精度は「完璧」でなくていい。 開発記録 35-4「確認画面のUX設計——信頼度・要確認フィルタ・一括OK」より
| なぜ公開するか | 「できます」と言うだけなら誰でも言えます。 どう考えて、どこで詰まって、どう直したかまで出しておけば、 ご依頼の前に確かめていただけます。 |
|---|---|
| この案件の記録 | 7 本あります。設計・精度の実測・確認画面・本番環境まで、 順に読めます。 |
| 載せていないもの | お客様の帳票と注文データが写る画面は載せていません。 掲載には先方の許可が要ります。 |
04 どこが得意で、どこが苦手か
得意・不得意は帳票によってはっきり分かれました。 測った結果が、確認画面の設計を決めています。
| 取引先 | 読み取り | 出た誤り/どう手当てしたか |
|---|---|---|
| A 社(カレンダー) | よく読めた | 数量の隣の「kg」「本」が抜けることがあった。 「単位も必ず読み取ること」を指示に加えて解消。 |
| B 社(手書き) | 中くらい | 商品名の誤字と、1 行の読み漏れ。 取り扱い商品の一覧を渡して候補から選ばせると減った。なくなりはしない。 |
| C 社(3 店舗混在) | 中くらい | どの数値がどの店舗の分か、対応を取り違えた。 帳票の構造を言葉で説明すると上がった。 |
| D 社(丸印) | いちばん難しい | 取引先名の認識漏れと、丸印の位置。 枠線にかかると判断が難しい。ゼロにはならないので、確認画面で支えている。 |
この表は、実際の帳票で試した記録 (開発記録 35-3)からそのまま起こしたものです。 削減率や短縮時間は測っていないので書きません。
05 いまの段階
| 確認できている段階 | 実装と動作確認まで。実際の FAX 帳票を読み取り、確認画面で直して 確定できるところまでを、本番環境で確認しています (2026 年 6 月時点の記録による)。 |
|---|---|
| 現場での利用 | 当社としては確認できていません。記録に残っているのは 「次は担当の方に使っていただく段階」というところまでです。 その後どこまで日々の業務で使われているかは、当社が確かめた記録がありません。 「使われていない」という意味ではなく、確かめていないということです。 |
| まだ言えないこと | 作業時間がどれだけ変わったかは、測っていません。 測る前に効果を書くことはしません。 |
06 記録
判断の理由も、詰まったところも書いています。
シンプルシステム株式会社 代表 伊藤勝彦