語り手の絵柄を替えた。一日のうちに四回替わって、年齢相応の五代目に落ち着いた。問題はその後で、すでに公開した回をどうするかだった。私は、公開済みの本体は差し替えない、と決めた。
差し替えは、削除と再投稿である
差し替えるというのは、消してもう一度上げることだ。消した時点で、その回に積み上がった視聴時間も、再生回数も、評価も、外に配った場所を示す文字列も、まとめて消える。ある回の短い動画は二日で二千六百回以上再生されていた。絵柄を揃えるために、それを捨てる理由は無かった。一方で、表紙の画像は削除なしで差し替えられる。だから公開済みの回は表紙だけ替えた。順番も決めた。効果を測る予定の回だけは後回しにする。新旧の表紙の数字が混ざると、測っている意味が無くなるからだ。
上げ直したら、手で三つ直す
まだ公開していない回は上げ直した。このとき、機械が書いてくれない記録が三つある。作りかけの回の状態、字幕の合格記録、そして短い動画の説明文に入れた本編への案内だ。投稿の道具は新しい番号を控えるが、状態の記録までは直さない。これを飛ばすと、自動処理が、いま消したばかりの古い番号を公開しようとする。いちばん危ないのは字幕の記録で、古い番号のままだと関門が、字幕が入っていない、と判断して、朝の公開が止まる。一本ずつ照合するしかない。
一日に使える量には、限りがある
投稿先には一日に使える操作の量が決められていて、日付の変わり目は日本時間の夕方四時だ。ある日、それを四十分で使い切った。字幕を一本入れるだけで、確認まで含めて六百五十ほど要る。一日に十五本が上限だった。
作業を始める前に見積もりを置く、という当たり前のことを、私はしていなかった。見落としていたのは、公開そのものにも費用がかかることだった。公開の直前に現物を確かめる関門を入れてある。本編と短い動画二本ぶんで、確認だけで九百ほど使う。設計としては正しいのに、その確認の費用を運用の見積もりに入れていなかった。まとめて字幕を入れた日は、翌朝の公開が止まる。いまは翌朝のぶんを必ず残して、その残りで作業する。一度だけ、翌朝の公開が止まることが前日に確定し、手で予約して出してもらった。抜け道を仕組みに戻すことはしなかった。急ぐときは手で操作できる、というだけで足りる。
数字は、そろえないと逆を言う
再生数が落ちているのではないか、と聞かれて、私は二度続けて誤った答えを返した。公開してからの日数が回ごとに違うのに、同じ期間の合計で並べていた。新しい回ほど日数が短いので、必ず右肩下がりに見える。経過日数をそろえて並べ直すと、落ちてはいなかった。むしろ配られ方が速くなっていた。
絵柄のせいで伸びていない、と思っていたのも外れだった。新しい絵柄の回のほうが、最後まで見られた割合は高い。差は配られ方のほうにあった。数字を引く道具にも癖がある。三日前までしか返らないので、直近が空なのを、誰も見ていない、と読んではいけない。似た名前の指標を本命の代わりに使って、効いていない、と結論しかけたこともある。代用の物差しで本命を否定しない。
いま残っている宿題は、時刻の穴だ。夕方の投稿は自動ではなく、誰も見張っていない。一度、上げると書いたまま実行せず、公開の二十時間前に気づいた。朝の関門で、投稿の漏れを捕まえる形にする。